──約束
「わぁ! どうしたのセブン! その鎧、かっこいいねー!」
「おう! いめちぇんってやつだぜー!」
「いいなー! ぼくもいめちぇんってやつしたい!」
ブルーがぽよぽよとはねる。
「おまえ、【擬態】できるから必要なさそうだけどな」
「でもあれ、まねっこみたいなものだから、そういうのじゃなくて」
「あー。おまえもなんか着たりできりゃいいんだけどなー」
例えば、人間の大きさになったり、人間に擬態したりして、洋服なんかを着ることはできる。そうしてみてはどうかとセブンは提案してみるも、ブルーの反応はいまいちだった。
「ぼく……人間になりたいんだよねえ」
「──人間に? 今のままでも別に不自由はしてねーだろ?」
「そうだけど……そうじゃなくてー」
ブルーが言わんとしていることは何となくわかるセブンである。
「まぁ、楽しそうだよな。人間」
「うんー。ここのひとたち、みんないいひと。ぼくにも優しくしてくれる。でも」
「壁を感じるよなー。わかるわかる」
どれだけ仲良くなっても、人間は人間。モンスターはモンスター。種族の違いは大きい。特に以前に起きたモンスター暴動事件が尾を引いている。いつまたモンスターたちが暴走するか。彼らは気が気でないのだろう。
「ブルーは人間が大好きなんだなー」
「うん!」
「……冒険王になるのがおまえの夢だったよな。それなら、なってみせろ。そうすりゃ、モンスターだろうがなんだろうが、みんなから尊敬されるようになる」
「うーん……なれるかな……」
「絶対になってやる! って意志が必要だろ。とにかく諦めずにやるこったな。アレンだって、40歳近くで冒険者になることに挑戦しはじめて、周りから無理だ無理だって言われたり馬鹿にされてきたらしいけど、今はどうよ?」
「立派な冒険者さんだと思う! そっか。うん……わかった。ぼく、がんばる!」
たくさん学んで、たくさん冒険して、時には失敗して、苦しみながらも成長していく。そうして初めて見えてくる景色もあるはずだ。
そう。冒険王だって、最初からすごかったわけじゃないのだから。
「ま、もう少し、人間たちがモンスターを受け入れられる世の中になったら、他の大陸も冒険してみようや。どこでも付き合ってやるぜ」
「……ほんと!?」
「ああ、約束だ」
「うれしいな、うれしいな! やくそくだよ、セブン!」
ブルーはぽよぽよと、セブンの頭の上で跳ねるのであった。
この約束は。
──二人の中で特別なものになる。
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