第15章 骨と魔法使い

第85話 ユーリとグレイの再会

 ユーリはその『マナ』を感じ、図書館から飛び出した。

 冒険者同士が揉めている。そこに──彼は


「ああん? なんで俺たちはここに住んじゃいけねーんだよ? てめえらばっかりいい想いしやがってよ」

「だから何度も言うように、ソフィ様の許可を得てだな」


 ユーリがその間に魔法を放つ。

 爆煙に驚いた冒険者たちが一斉にユーリを見る。


「あんたは……!」

「──ここで会えるとは思いませんでしたよ。冒険者グレイ」

 ユーリを見て、グレイは顔を歪めた。

 なんとも醜悪。背中に走る怖気が不快だった。

「ひゃはは! これはこれは、俺の命の恩人、護りびと様。会えてうれしいぜ!」

「黙りなさい」

 ユーリは魔法の力でグレイの首を締め上げる。

 グレイが引き連れてきたチンピラのような冒険者たちは、何が起きているのかわからずに、ただただざわつく。


「ひゃ……はは。俺を殺すかい、護りびと様よ。いいのかなあ、そんなことして。俺らのバックにゃ、すげー人たちがついてるんだぜ。報復のため、戦争が起きるかもなあ。この里が火の海になってもいいなら、そうしな」

 ハッタリだ。そう思うものの、グレイの思考が流れてきて、ユーリは力を止めた。

「物分かりがいいな、護りびと様よ。安心しな、本当にここに住むつもりはねぇ。”ボス”からここの様子を見てくるように言われてただけだ。じゃあな。いくぞてめーら」

「へ、へい」

 へらへらと笑い続けるグレイを、ユーリは睨みつける。眼帯の下の右眼が、抑えられないくらいに熱くなっている。


「そうだそうだ、あんたにひとつ伝えておくことがあった。あの森人っていうんだったか……あんときのガキ、この大陸に来てるぞ」

「──なんですって?」

「俺を殺すためにわざわざ追いかけてくるなんてなぁ。ま、返り討ちにしてやったけどな」


 ルーのことだ。

 彼もこの大陸に来ていたなんて。

「おっと、殺しちゃいねぇよ。ってか逃げられた。あの分だと、また俺を殺しに来るだろうなぁ……楽しみだなぁ、ひゃはははは!」

「……最後に彼を見た場所は」

「ありゃ確か、どこかの遺跡荒らしてる時だったかなあ。方角的に……そうだな、ここから北に跳んでいったか」


 北。

 すぐに探らなければ。

 しかし、ルーに会ってどうする。わからない。でも、会わなければ。

「ひゃはは。行っちまったか」


 なんだか少し、楽しいことになってきたじゃねーか。

 また会おうぜ、護りびと様よ。グレイはすでに遠くにある、ユーリの背中に向かって、そう言うのであった。

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