第51話 スーパーフィーナちゃん

「こ、こいつが……このダンジョンのボスキャラか!」

 なんて……なんておぞましいゴーレムなんだ。

 そいつは鬼の形相でおれたちを出迎えた。ツノが4つ。目が3つ。右腕が2本に、左腕が3本。足は4本。蛇のような尻尾の先端にはトゲトゲの鉄球。

 悪夢に出てきそうな造形をしてやがる。なんてバケモンをつくってくれたんだ、フィーナ! 


「ここには特殊なギミックはないようですね。正攻法でいきましょう」

「おう! おれが囮になる! その隙をつけ、ブルー、レオン!」

「がう!」「うん!」

 ここでのダンジョンの経験を経て、ブルーもレオンも成長していた。

 何よりレオンがちゃんと言うことを聞いてくれて、連携が取れるようになったのがすげー。アレンもびっくりするだろうな。

 ブルーも擬態をうまく使いこなせるようになった。モンスター……といってもここではゴーレムだが、その一部を取り込んだことにより、色々な形に変化できるようになった。モンスターゴーレムの姿となることにより、やつらはブルーを仲間だと勘違いして油断してくれた。そのおかげで余計な戦闘を避けることができたのだった。


 ボスゴーレムが尻尾で攻撃してきた。一撃が、重い。しかし【英霊の盾】で十分防げる。毎回違う盾が出てくるからちょっとオモシロい。効果も違うようだな。


「がううう!」

 レオンの鋭い蹴り。蹴り技が得意なようだな、こいつ。

 ゴーレムの腕が崩れた。

「てぇい!」

 ブルーがハンマーのような形に変化し、【硬質化】して、ゴーレムの他の腕を壊していく。


「──アシッド・レイン」

 ユーリの魔法。なかなかエグいやつがでた。

 それは酸性の雨。ゴーレムがじわじわと溶けていく。

 溶けたゴーレムの顔は、なんだか泣いているように見えてちょっとかわいそうだった。


 ゴーレムの足が崩れ、倒れた。


 沈黙。ゴーレムの身体から、魔導生命体が抜け出し、逃げていった。



「勝利!!」

「やったー!」

 ぶっちゃけ、最後が一番楽だったな。

 ちなみにゴーレムの残骸は、一定時間が経過するとくっついて元通りになるらしい。魔導生命体がその中に戻り、また動くようになるのだという。よくできてんなー。


「ぱちぱちぱち! みんなすごいね! がんばったね! さぁ、次は隠しボス戦だー!!」

「てめー、フィーナ! いたのか! ずっと、ここに!」

「ちょっと色々と調べものがあってね! さぁ、かかってきんさい!」

 しゅっ、しゅとフィーナは拳を宙に走らせている。

「え? 隠しボスって、まさかおまえなのか?」

「うん! 今思いついた! その方がおもしろいっしょ! さ、ばっちこーい!」

 ……えー。めんどくせーやつだなー。


「よし、レオン。遠慮せずにぼこぼこにしてやれ」

「がうっ!」

 向かってくるおれたちを見て、フィーナがにやりと笑った。


「魔導強化! スーパーフィーナちゃん!!!」

 ゴーレムの欠片が、フィーナに集まっていく。

「がしーん! がちょーん!」

 フィーナはなんか、効果音的なものを自分で言ってる。なんだこいつ。

「で・で・でーん! どう? かっこいーっしょ!」


 ……。

 さっきのあの超絶不細工な気味の悪いゴーレムの頭がフィーナに置き換わっただけの、とにかく奇妙な物体がそこにあった。

「かっけー!」

 レオンが目を輝かせている。感性やべーな。いや、案外前衛芸術的な要素が……いや、ねーわこれ。


「すごいのはこれだけじゃないのさー! 魔導生命体のみなさん、かもーん!」

 液体のヤツらがゴーレムに集まってくる。そして、ゴーレムの下半身がドラゴンのような形になっていく。


「よっし! 完全体!! かっくいー! そんじゃ、いっくよー!」

 ドラゴンの部分から、閃光が放たれた。おれたちがいるところとは全然違うところに当たり、その一帯は大爆発した。ダンジョン全体が揺れたかのような衝撃。

「お、おま、おまえ。おれたちをころすつもりか!?」

「あっれ~!? おっかしーなー。火力が出すぎてるなー。ま、いっか」

「よくねー!」

 くっそ。やりたい放題やりやがって!

 こうなりゃ、ホントに手加減無用だ。


「【英霊の盾】」

 おれのスキルが、フィーナから放たれた閃光を跳ね返す。

「うわわわわ! このー! フィーナジャイアントパーンチ!」

 巨大な拳が飛んでくる。

 レオンがそれをかわし、地面を蹴り、高く跳ぶ。

「レオンキーック!」

 あんなやつに影響されんでいい……。しかし効果は抜群だ!

「あぶしっ! ワタシの弱点であるこの顔を蹴るとはやるな!」

 むき出しだからな、弱点。


「ぼくも忘れちゃだめだよー。えい」

 小さく分裂したブルーが、それぞれを硬質化させた。まるで散弾銃。ゴーレムの身体を穿つ。次にハンマーとなったブルーは、フィーナの頭に落ちていった。ゴイイイイン。直撃だ!


「ううんー。目が、ちかちかする! あ、お星さま」

「……人間部分をむき出しにしたのが間違いでしたね。氷結魔法」

「うわー……さ、さむいー」

 フィーナは氷漬けになった!



 今度こそ、おれたちの勝利だ!

 ってか何なんだこの展開は……。

 まぁ、レオンとブルーが喜んでいるから、よしとしよう。


 こうして謎の隠しボス戦を制し、ダンジョンを完全攻略したおれたちなのであったとさ。

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