第50話 考えるのは苦手なんだぜ!

 そいつはたぶんだが、オークをイメージした、土で出来た魔導人形ゴーレムだ。いっちゃあれなんだが、すげー不細工だ。


「あ、それつくったのワタシワタシー!」

 おまえか。

 だからこんなに不細工なのか。センスがかんじられねー。

「ホントはミノさんに彫刻してもらってから、魔導生命体を注入する予定だったんだけど、時間なくてさー。あ、あっちになにかある!」

 言うだけ言って、フィーナは勝手に奥へと進んでいってしまった。


『おぉ……おぉぉぉ』

 ゴーレムが呻きながら歩いてくる。

 なんて不気味な。目と目がすげー離れてるし、豚の鼻はめっちゃでけーし、口がねーし、全体的にアンバランスで怖い。まるで呪いの土人形といった様相だ。こんなんが暗闇からでてきたらそりゃもうトラウマモンだぜ。


「うがあっ!」

 レオンの回し蹴り一閃。ゴーレムはがしゃんと砕け散った。中身すっかすかじゃねーか。

 ゴーレムの欠片の中から、緑色のスライムみたいなやつが出てきて、逃げていった。フィーナが言ってた、魔導生命体ってやつか。

 なるほど。これならモンスター同士でやりあわなくてもいいってこったな。こういうのはよく考えるな、フィーナは。


「しかし、ちょっとぬるいんじゃねーか? いくら初級冒険者レベルとはいえ、おれたちの敵じゃねーな!」

「おう、敵じゃない!」

 そう、なめくさっていたおれたちはすぐに痛い目に遭うことになるのであった。



「ミノさーん! きいてねーよー! なんだあの5階層のでかいゴーレムは! 全然勝てねー! レオンがすっかり意気消沈しちまったじゃねーか!」

 おれは文句を言った。

「うむ? あのゴーレムか。あれは炎の魔法が弱点だ」

「炎の魔法なんてつかえねーよー」

「お前たちのパーティはバランスが悪い。一人魔法使いを入れるべきだ。そうでないのなら、アイテムを使うことだな」

「あー……そういう、わりとガチで対策考えなきゃいけないやーつね」

「無論。冒険者とはそのようなものであろう」

 正論!

 あー。

 じゃあ、仕方ねー。あいつもパーティに入ってもらうか。

 おれは図書館へと向かった。


「で。あなたたちのパーティに入るメリットは」

 うわ。

 ユーリもなんか機嫌悪そうだな。

 こいつもアレンがいないからだな。いっつも冒険王のこととか、小説のこと話してるもんなー。仕方ねぇ。禁じ手だ。


「アレンに20冊本を買ってもらえる権利をやろう」

「? なぜあなたにそんな権限が……」

「あるんだなー、なぜかこれが! そ・し・て! あいつが帰ってくる日に新刊が出るみたいだぜー、おれには何の本かわからんけど。前日の夜から並んでやってもいーんだぜー?」

「魅力的な提案ですねやりましょう」


 ちょろい。ちょろすぎる。

 こうしておれたちは、パーティに魔法使いを加えることに成功した!

 仕切り直しだぜー!



「ミノさんミノさーん! 10階層にやべーやついるじゃねーか! ってか、フィーナにゴーレムつくらせるのやめろ!! 怖いんだよ!」

 おれはまたミノさんに泣きついた。

 10階層にいたのは、魔法を反射し、さらに傷ついても再生してしまうとんでもないゴーレムだった。

「む? ユーリがいるのに、対処できなかったのか?」

「……カラクリは解けましたが、あの場に魔法封じのトラップまで仕掛けられているとは、油断しました」

 ユーリいわく、魔法で落とし穴のトラップを発動させ、ゴーレムを落として、そこにこれまた魔法で天井の大岩を落として封じてしまえばよいとのことだったのだが……。

「魔法使いは攻撃を得意とするもの、補助を得意とするものに分かれる。魔法使いひとりでは、緊急時に対処することが難しい事態もでてくるだろう」

「にしても意地が悪いわ!」

「ダンジョンの入り口に指南書がおいてあっただろう。それを読んでいないのか?」

「なぁにぃ~!?」

 あ、おれ説明書とか読まないタイプだわ。気づかなかった。

「すでに15階層を攻略したパーティも出ているぞ。まぁ、頑張ることだな」


 なんてこった。

 ダンジョン攻略、なかなか骨が折れるぜ。骨だけにな! おれ!



 そんなこんなで。



 アイテムも駆使しつつ、どうにかこうにか15階層までたどり着くおれたちであった。



 すげーどうでもいいんだけど、フィーナどこいった?


 ま、いっか。


 つづく!

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