第10章 がいこつ冒険譚?
第49話 モンスターのためのダンジョン
がじがじがじとおれの頭がかじられている。レオンがもんのすげー不機嫌だ。
理由は一つ。アレンにおいて行かれたからだ。
あの一件以来、レオンはアレンにもんのすげーなついていた。ひとときも離れたがらねー。引き離そうとすればもう、ひっかかれるし噛みつかれるし、かじられるしで大変なことになるのだ。おれがかじられるのはいつものことではあるのだが。犬は骨が好きなんだぜ。
「いい加減機嫌なおせよー。アレンはおまえのためを想っておいて行ったんだぜー」
なんて一応は言ってみるのだけれども。まぁ、話し通じんのだわ、こいつ。
「しゃーねー。おれたちだけで冒険に行くか」
「ぼうけん? なんでだ」
「ダンジョンでお宝をゲットして、アレンにプレゼントすんだよ。そうすりゃあいつ、すげーよろこぶだろーなー。おまえのこと、いっぱい撫でてくれるだろーなー。いーなー」
「アレン、よろこぶ? おれ、いっぱい撫でられたらうれしい! おなかもなでてもらいたい!」
よし、食いついた。いや、食いつかれているんだけどもすでにな、おれは。
「セブン、ダンジョン行くの? ぼくも行くー!」
「ブルーもいくか! いいぜー。しかし、モンスターだけでダンジョンなんて行ったら、他の冒険者たちにやられちまうんだぜ」
「その心配がいらないダンジョンを用意してある」
「み、ミノさん!」
いつも唐突に現れるなこのひと。困った時のミノさん。
「ここモンスター居住区に、モンスターたちのモンスターによるモンスターのためのダンジョンがオープンしたのだ、今日から」
「あー……なんか言ってたやつかー」
ダンジョンといえばだ。そこにいるモンスターたちは冒険者やられるだけの存在。しかしここ中央都市に限っていえば、ブルーのように、冒険者となってダンジョンを冒険したい……というモンスターも増えている。その要望に応えるべく、ミノさんは昼夜問わずダンジョンづくりに励んでいるというわけだ。モンスターがモンスターを倒さなくていいように、何やら準備を進めていたらしいが、それが完成したというわけだ。
ドワーフたちが来てからずいぶんと色々な開発が進むようになってミノさんの負担が減るかと思いきや、手が空いたら空いたで、また色々なことに着手するミノさんだった。根っからの職人だな。
「今のところは全15階層。少し深いが、初級冒険者が攻略できるレベルに設定してある」
「ふうん……15階層、か。アレンが戻ってくるまでに攻略できそうかねぇ」
「お宝! お宝げっとしてアレンにプレゼント!」
「はいはい、そうだな。そんじゃまあ、支度して行ってみっか!」
「おー!」
こうして、骨のおれ、スライムのブルー、犬っころのレオンはパーティを組んで冒険に出発するのであった! なんだこのパーティ! 不安しかねぇ!
「で。なんだおまえがいるんだ……フィーナ!」
「おっすおっす! ミノさんが新しいダンジョン創ったっていうじゃん? そりゃ、行くしかないよね!」
相変わらず汚いフィーナが元気に笑っている。
「おまえ、くさい!」
犬は嗅覚がいいからなあ。フィーナのにおいはたまったもんじゃないだろう。
「えー、そっかなー。ま、いいじゃん! そんじゃしゅっぱーつ!」
しきるなしきるな、おまえがしきるな。
フィーナはずんずん進んでいってしまったので、おれたちは少し遅れてから出発した。あいつと関わるとロクなことにならなさそうだ。
「たのしいな! 冒険たのっしいなっ!」
ブルーがはしゃいでいる。
「……おまえ、なーんかフィーナに似てるよな。やっぱ」
「うん? そういえばぼく、フィーナのさいぼう? ってものをもらったから、似ているんだって!」
「はあ? さいぼう?」
何の話か全然わからん。とにかくフィーナに何かを与えられたから、似ているということか。髪の毛とかか?
「そだ。だから、こんなこともできるかも」
ブルーの身体がぐねぐねと動き、大きくなる。そしてその姿は──フィーナそっくりとなる。ソフィから授かったスキル【擬態】だ。
「はぁー。そっくりだな。しかもあいつと違ってにおわないのがいいな! ところで、どんな姿にでもなれんのか、それ?」
「うーん。たぶん、その人の『いちぶ』を取り込めばへんげできるんじゃないかって、ソフィさまとフィーナが言ってた!」
一部……なるほど。フィーナの髪の毛かなにかわからんが、その一部を取り込んでたっつーことだな、やっぱ。
ブルーはぐねぐねと元の姿にもどった。
「おまえ、すごいな」
レオンがブルーをぽよぽよつつきまくる。
「っと。なんかお出ましだな」
気配が近づいてくる。
モンスター用のダンジョンに出てくるのは、一体何なんだ? 結局モンスターってオチはねーよな。身内同士でやりあうのは勘弁してもらいたいところだが。
そうしたおれの心配は杞憂だったようだ。
現れたのは──ゴーレム。魔導人形だった。
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