第48話 次なる冒険へ!
クライムさんが僕を見送りに来てくれた。
「団長が残念がっていましたよ。優秀な人材だから是非とも引きとめてくれと懇願されました」
「いや……僕なんか、まだまだです」
「貴方は謙虚すぎますね。それはそうと……セレナさんのこと、改めてお礼を申し上げます。ありがとうございます」
クライムさんが深々とお辞儀をする。
「貴方の行動が、勇気が、あの方を救いました。あの方はやっと前を向くことができたのです」
「そう、ですか……少しは役に立てて、よかったです」
「少しどころか、団長より活躍してますよ、貴方は。団長は本当に仕事をしないんですよ、困ったことに。そうそう。アレンさん、【アイテムクリエイション】……その力は、迂闊に他の冒険者の前では使わないほうがいいでしょう」
「……はい」
「心配なさらず。セレナさんがこのことを話したのは私だけです。なにかあったら力になってほしいとお願いしてきたのですよ。あの方が、この私に。私のことを毛虫を見るような目でみてきたあの方が……」
クライムさんでも毛虫扱い……よっぽど人間が嫌いなんだなあ。
「中央議会の老人どもに知られないようにしなければなりませんね。あの方々は私利私欲にまみれた魔物ですからね」
「中央議会の老人……よく知っているような口ぶりですけど、クライムさん、あなたは一体……」
「私はこのドラゴンバスターズの副団長にして、西の大ギルドのマスターです」
「は!? あ、えぇぇ!?」
「ソフィ様に頼んで、貴方に助っ人を要請したのはこの私です。私の目に狂いはなかった」
驚いた。まさかクライムさんが、ギルドマスターだなんて。ここの副団長として、みんなをまとめるだけじゃなくて、最前線で戦って、しかもギルドマスターの役割もこなす……これは胃薬が手放せなくなるわけだ。
すごいなぁ。ソフィ様といい、クライムさんといい、中央都市のギルドマスターになる人は器が違う。僕はそう思う。
「アレンさん。貴方は生粋の冒険者。我々としてはぜひドラゴンバスターズに迎えたいところですが、貴方はそれをよしとはしない人です。しかし、それでいい。貴方は貴方の道をお行きなさい」
「……ありがとうございます」
僕とクライムさんは握手を交わした。
「ふくだんちょー! あたし、あたし、北の大ギルドに移籍しますぅぅ」
「……シータさん。もちろん、ダメです」
「いやあぁぁぁー! アレンさんーいかないでー!」
「……はあ。あれはこちらで何とかしますので、今のうちに行ってください。それではまた、アレンさん」
「はい。短い期間でしたが、お世話になりました!」
そして僕は歩き出す。
後ろの方で、いつまでもシータさんの叫び声がこだましているのであった……。
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