第30話 クエスト、完了!

「ここが──中央都市! チンケなところだな!」

 言葉とは裏腹にユズユさんの目は輝いている。感動に震えているようだ。他のドワーフたちもはしゃいでいる。

「色々と案内したいところだけど、先に居住区に行こう」

 きょろきょろと色々なところに目移りするユズユさんたちを、僕たちはどうにかモンスター居住区まで連れていくのだった。


「大変だ、アレン!」

 モンスター居住区に戻った僕たちに、慌てた様子で駆け寄ってきたのはゲイルさんだった。

「何か……事件ですか!?」

「ああ! 温泉だ! 温泉が湧いた!」

「えぇぇ!?」

 ここでも温泉。

 なんだろう。温泉に縁があるのかな。

 温泉が湧いたところにはすでにソフィさんがいて、ここに温泉施設をつくるぞーと張り切っていた。ソフィさんに提案する手間が省けてしまった。



「ドワーフを連れてきてくれるとは……親方が喜ぶ」

 いつも岩のような顔をしているミノさんが、笑った。なんとも嬉しそうだ。

「ミノタウロス! でけえな、はじめてみたさ」

 ユズユさんとミノさんの身長差がすごい。ユズユさんがぴょんぴょんと飛び跳ねても、腰まで届かないくらいだ。


「ほう。長の娘か。それはまたすごいのを連れてきたな。ではさっそく手伝ってもらいたいことがある。案内しよう」

「それじゃあミノさん、あとはよろしくお願いします。ユズユさん、また後で」

「おう。あばよ!」

 これで、ひとまず僕たちのクエストは完了、かな。


「あれ、そういえばセブンはどこに?」

「温泉が湧いた場所に走っていきましたが」

 そういえば帰り道、温泉に入りたかったなーみたいなことを言ってたっけ。


「アレンさん。お願いがあります本屋にいきましょう」

「え? ちょっとやすまない……ってわぁぁ」

 僕は引きずられる。

「だめー! アレンちゃんはアタシと買い物にいくのー!」

 エクレールの雷の力と言うか磁力みたいなものに引っ張られる。

「ではこうしましょう。本屋に行ってから、買い物に行きましょう」

「えーーーーー。ま、いっかー。アタシもアレンちゃんと読みたい本あったしー。じゃ、いきましょいきましょ」

「あぁぁぁぁ」


 僕に拒否権なんてものはなく。

 疲れを癒す間もなく、本屋へと向かうのであった。

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