第27話 策はないけどあったんだぜ!
「え!? 何の策もない!?」
「おう! 何の策もないんだぜ!」
僕はセブンの言葉に耳を疑うしかなかった。
「魔法もあんまり効かないだろーしなー。勝ち目はゼロだ!」
「え? え?」
「あ、もちろんユーリ頼みにしているってわけじゃねーからな」
「まぁ……どちらにしても、私は調査に行くつもりではありますが。使命を果たすために」
「セブン、一体どういうつもりで……」
「カンだ!」「勘!?」
セブンがカラカラと笑う。
「それは冗談だけどな。まぁ、こうした姿勢が大事ってこった。要は自分たちのために命を懸けて戦ってくれたって感じてもらえればいいのさ」
「は、はぁ……」
「どんなバケモノか一目見て帰ってくりゃいいさ。今後、何か対策が打てるかもしれねーしな」
セブンが言いたいことはなんとなくわかったけれど、それで問題が解決するのは後のことになりそうだ。
「とにかく、これもまた『冒険』だぜ。経験を積むと思って、張り切っていこうぜー!」
セブンの勢いに圧されるがまま、僕たちは鉱山へと出発するのであった。
鉱山の地図はロゥグさんからもらっているので迷うことない。最短で『バケモノ』のところまではたどり着けるというわけだ。当然、トラップなどもないのだけれど──モンスターが、多い。
「邪悪なマナにひかれ、狂暴化したモンスターたちがこの鉱山に集まっているようですね」
いちいちすべて相手にしていられませんと、ユーリがモンスターたちに【混乱魔法】をかけて同士討ちをさせた。そんなこともできるのか……。
先に進むにつれ、嫌な感じが強くなっていく。
だんだんと、通路が広くなっていく。
その奥に──そいつはいた。
「……カニだな」
「うん……カニだ」
それも特大の。
ゴッツさんの3倍はある大きさとゴツさ。その甲羅は鉱石にびっしりと覆われていた。カニの周りには、小さいカニ──といっても人間の子供サイズくらいのものがうじゃうじゃいる。
「ちっこいのはなんとかなりそうだが、あのでかいのはやっぱどうにもなりそうにないなー」
「水属性なので、アレンさんの雷の魔法は通りやすいでしょう。しかし、あの大きいモノは、雷に耐性のある石も身に着けています。他の魔法も……効きづらいでしょうね」
大きなカニはぶくぶくと泡を吹いている。
こんなモンスターもいるんだなぁ……。
「あんなのにビビってんのか、あん? あんなやつ、オレ様の炎でゆでちまえばいちころだろ」
僕とセブンは驚いてユーリを見た。ユーリは右眼を抑えている。
「……すみません。私の右眼に封じられた悪魔が」
「悪魔!?」
「ええ。私はこの右眼に恐ろしい悪魔を封印しているのです。やはりもう一段階、封印を強めるべきですね」
そういって、ユーリはどこからか黒い眼帯のようなものを取り出して、右眼を覆った。
「おまえもなかなかオモシロいやつだな。ん、待てよ。炎でゆでるかー。悪くないな。いくらバカでかくてもカニはカニ。中身まで硬くねーだろ。しかし、あんなでかいやつどうやって」
そこで僕とセブンがはっと気がついた。
「──温泉だ!」
セブンが言っていた、温泉。そこにこのカニを追い込んで、熱して茹でてしまえば……。といっても、そんなことができるわけもなかった。どうやってこの大きなカニを誘導すればいいのか。そしてどれだけの広さの温泉かわからないけれど、そこを沸騰するくらいに熱することなんてできない。
「やってみる価値はありそうですね」
「……え?」
「ええと、セブンさん? でしたっけお名前。ここから温泉までの距離は」
「坑道の入り口を出て、反対側に回って降りればわりとすぐだったような気がするぜ!」
「では、そこまで誘導しましょう」
「ちょっとユーリ!?」
ユーリが勇ましく飛び出した。そして炎の魔法をカニたちにぶつけていく。
「……やはり炎も弾きますか。しかし、熱さには弱そうですね。嫌がってます」
嫌がっているというか、ものすごく怒っているというか。
「後退しますよ!」
カニが追いかけてくる。
入り口に戻るほど、道は狭くなっていくけれどお構いなしで突っ込んでくる。ものすごい力で、岩を砕きながら道を作っている。
果たしてうまくいくだろうか……。
しかしもう、やるしかない。
僕は覚悟を決めるのであった。
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