第26話 ドワーフの里の長

 ドワーフの里には、いたるところに鍛冶工房があった。金属を槌で打ちつける音が響き渡ってる。

 無造作にそこらへんに置かれている武器や防具は、どれも一級品。すごい光景だ。


 僕たちは里の長のところへと案内された。

「よくぞ来たな、客人。ソフィの使いだってな。大したもてなしもできんが、ゆっくりしていくといいさね」

 長は居間にあぐらをかいていた。

 ドワーフは小柄なイメージだけれど、この人は大きい。そして筋肉隆々。その姿はなんだかゴッツさんと重なるけれど、この人は……女性だった。

「ん? おれの知っている長と違うな。あ! おまえ、娘か!」

「はて。オレっちを知っているのか?」

「おぼろげだがな。おれはこういうもんだ」

 セブンが兜を取る。


「おお! ヌシはあの時のガイコツ殿! 父が世話になったな!」

「そうなんだぜ! あんまりおぼえてねーけど!」

「いやあ、懐かしい。あれから、オレっちの親父は鉱山の事故に巻き込まれてな……すでに他界してしまったさ」

「で、おまえが跡を継いで長になったってわけか」

 うむ、と長が頷いた。

「名乗り遅れたね。オレっちはロゥグ。ドワーフと人間とのハーフさ」

 僕たちは簡単に自己紹介をした。一通り話をした後で、僕はモンスター居住区の話を切り出した。


「ソフィも諦めが悪いさね。こっそり色々と支援してくれたり、気持ちはありがたいがね。ここらでソフィに恩を返したいのはやまやまだが……」

「……鉱山の件、ですね」

「知っていたか。そう、鉱山に現れたバケモノ……ヤツを倒さねばどうにもならん。最近では里に妙なモンスターを送り込んでは暴れまわり、手に負えん。今ある鉱石も底をつきそうだし、商売あがったりさ。この問題を解決しない限りは、誰も動きがとれんさ」

「一体、どんなモンスターなんだよ。おまえ、確かめちゃくちゃつえーだろ。それでも勝てないってのか」

 セブンが訊ねる。

「鉱石を取り込んだ、バカでかいかにのようなやつさ。金剛石を取り込んだのか、とんでもない硬度で文字通り歯が立たんさ。無論、金剛石を砕ける武器をオレっちたちは持っているさ。ところが砕いても砕いても、あほみたいな回復力ですぐに傷を再生しちまうのさ」

 それは……確かにとんでもないバケモノだ。


「中央都市のギルドに討伐を要請してみては?」

「中央の連中はオレっちたちを搾取することしか考えていないさ。過去散々な目に遭ってきたさ。ソフィのとこだけは違うけどもな。それでもオレっちたちは人間の力は借りんさ」

 根深い問題があるようだ。

 これは簡単には解決できそうにない。


「──よし! じゃあ、そのバケモノ、おれたちが退治してこよう! そうしたら力を貸してくれるな!?」

「ガイコツ殿。あのバケモノ相手に勝ち目はないさ。何か策があるさ?」

「おう! 任せてくれ!」

「……ふむ。わかったさ。あのバケモノを倒してくれたら、お前たちに協力することを約束するさ!」


 セブンの策とは、いったい──。

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