第7章 ドワーフの里

第24話 ドワーフの里へ行こう!

「え? この子、ヘルハウンド!? どうして獣人化したんだろ! うーん、気になる! 解剖したーい! じゅるり」

 こ、この人がフィーナさんか。セブンの言っていた変人……。

 着ている白衣?はボロボロで変な色をしている。髪はぼさぼさ、顔は汚れている。あと、失礼なことを言うようだけれど……とてもくさい。

 ヘルハウンドは威嚇するものの、フィーナさんのにおいに顔をしかめ、そして怯えているようだった。


「レオンをいじめちゃダメ!」

 ブルーがヘルハウンドをかばうように、フィーナの前に立った。

 ってレオン?

「へえ! 名前つけたんだね! よろしくね、レオンちゃん! ぢゅふふふふ」

 フィーナさんが不気味に笑う。怖い。


「フィーナよ、みな、ひいておるぞ。そこまでにしておけ。あとくさい! 風呂はいれ!」

 ソフィさん鼻を摘まみながら言った。


 モンスター居住区に戻ってくると、ちょうどソフィさんとこのフィーナさんがやってきたところだった。僕たちは冒険の報告と、このヘルハウンド……レオンのことを相談することにしたのだった。


「しかしまぁ……もうムツキを攻略してしまったとはのぅ! まぁ、ゲイルとクルスがついていれば当然か」

「いえ、私たちはほとんど何もしていません」

 クルスさんが言うと、ソフィさんはまた驚いた。冒険の詳細を報告すると、さらに驚いた。


「ううむ……ヘルハウンドにメタル系モンスターの出現。これまでなかった異変じゃな」

 ソフィさんは腕を組んで眉間にしわを寄せる。

「これは調査が必要だね! 調査っ、調査っ! 楽しい調査!」

「フィーナよ、おぬしは行くなよ? 絶対行くなよ?」

「行かないよ~! ぢゅふふふふ」

 あ。これ行くやつだ。


 ちなみに。

 フィーナさんにメタルラビィを見せたら「やべーことになる」とセブンが慌てていたので、ニコルと一緒に外で遊ばせている。

 これは確かにやべーことになっていたかもしれない。


「それにしても……たった2回の探索で、目覚ましい成長ぶりじゃな。みんなれべるあっぷしておるようじゃな」

「ソフィさんのおかげです。ありがとうございます」

「アレンよ、わしのことはソフィちゃんと呼ぶがいいぞ! それにわしはお主たちの可能性の一つを引き出したにすぎん。礼を言われるまでのことではない」

 というものの、ソフィさんはなんだかうれしそうだった。


「気になることは多いが、ひとまず置いといて。今後のわしら北の大ギルドについて話しておくとしようかの。中央の連中の許可がおりて、正式に、このモンスター居住区を拠点にすることが決まった。その代わり、ちょっとした面倒事を押しつけられることになったがの」

「面倒事?」

「うむ。中央の連中の依頼……んまぁ、クエストとしておくか。それを無償でやらねばならぬ。ダンジョン探索といったものではなく、例えば移民・難民の受け入れ・世話とか、居住区の土地を使って食糧生産したりだとか、雑務系が主じゃな。時にはモンスター討伐などのクエストも舞い込んでくるらしい」

 それらを、無償で。

 とはいえ、クエストで生じた何らかの報酬……例えば懸賞金のかかったモンスターを倒したとしたら、その報酬はこちらで受け取ってもいいらしい。


「まぁ、中央の連中もこちらの事情を知っておるし、難易度が高いクエストはこないじゃろうよ」

「あ、ソフィちゃん。そういえば、お偉いさんがね、30人ほどの移民さんをモンスター居住区に住まわせるって言ってきたよ」

「おぬし……そういうことは先に言え……ミノさんたちの他、くりえいてぃぶ系のスキルをもつ人材のスカウトが必要じゃな。ううむ」

「あ、それとね。来週あたりにこの居住区でつくってる『ミノさんダンジョン』をひとつオープンしてくれって」

「だからー! さ・き・に・い・えー!」

「わはー」

 ソフィさんが絶叫し、フィーナさんは笑っている。


「あ、あの。僕たちで出来ることは協力しますから……」

「! あ、ありがとうの、アレン! 好きじゃ~あばばばb」

 ソフィさんがエクレールの電撃をくらう。

「しかし、人手が全然足りん……他の冒険者たちはあまりここに関わろうとせんし、どうしたものか」


「──ドワーフの里に協力要請をするのはどうか」

「ミノさん!」

 どこからともなく、ミノさんがのしのしっとやってきた。

 ドワーフ。鍛冶スキルを得意とする、職人気質の土妖精と聞いたことがある。

 この今居住区にも、何人かはドワーフがいるものの、その数は少ない。


「適任ではある。この居住区を開発する上で欠かせない存在といえよう。しかし……ううむ。過去何度か交渉しにいったことがあるが……すべて断られておるからのぅ」

「我が行こう」

「いや、今ミノさんにここを離れられると、非常に困ることになる」

「ふっふっふー! ここはワタシの出番の予感!」

「フィーナは絶対にダメじゃ」


「ん? ドワーフの里? そういえばおれの知り合いがいるような気がするぜ! ぼんやり思い出した!」

 セブンが何かを思い出しかけているようだ。

「場所もなんか思い出してきた。えっとここだと北西だよな」

「そうじゃ。行ってくれるか!?」

「おう! いくぜ! 説得できる自信はまったくねーけどな! いや、待てよ。そうだな。アレン、エクレール、あとユーリ! 一緒に来てくれ!」

「ん? なんじゃその人選は? 何かあるのか?」

「雷の精霊、そんでその精霊に好かれた男と、マナを自在に扱える女。とおれ、ガイコツ。このメンバーならきっとうまく行くぜ!」

 そ、そうだろうか。一度行動は共にしているけれど、全然まとまる気がしない。


「ぼくもいきたーい!」

「ブルー。おまえはその犬っころに色々と教えてやれ。骨だからってうまそうに見てくるんだそいつおれのこと!」

「犬っころじゃないよ、レオンだよ! でも、わかったー! 一緒にあそぼーね、レオン!」

「がう!」

 ヘルハウンドのレオンは、すっかりスライムのブルーになついたようだった。相変わらず殺すような視線で僕を見てくるけれど。


「では、ドワーフの里の方はセブンたちに任せるとしようかの。クルスはわしと一緒に来て、人材のすかうとじゃ。他のものは資材集め。ミノさんの指示に従うように!」


 こうして僕たちは北の大ギルド再建及び、モンスター居住区の拡張を手伝うことになった。



 また一波乱ありそうな予感──は、やっぱり的中してしまうことになるのであった。


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