第22話 VS オーガ
昨日の騒動で、ヘルハウンドが現れたルートは一時封鎖されていた。
キースさんたちが出会った2体のメタル系モンスターの出現といい、このダンジョンで何かしらの異変が起きているのは間違いない。
よって今回の探索は、僕たちパーティ全員で臨むことにした。
──昨日の出来事が嘘だったかのように、何事もなく。僕たちは9階層、このダンジョンの主【ダンジョンマスター】のところにたどり着いていた。
「……オーガか」
2本の角を生やした『鬼』。緑色の肌の巨躯。手には岩で出来たこん棒を持っている。その周囲にはゴブリンたちが大勢いた。
ヘルハウンドを見た後だと何とかなりそうな感じがしてしまうけれど、僕たち初級冒険者にとっては危険なモンスターだ。
「アレンさん。あのモンスターなら、あなた一人でも倒せます」
ユーリがいきなりそんなことを言うので、僕は驚いてしまった。
「い、いや! オーガは初級冒険者が数人がかりで倒せるかどうかの強敵だよ!?」
パーティがうまく連携をとってどうにか倒せるレベルのはず。僕一人でどうにかなるようなものではない。
「昨日のあの感覚、忘れていませんよね?」
「う、うん」
「なら、大丈夫です」
雷の魔法で何とかしろということか。
「アレンちゃん! アタシがついているからね!」
エクレールが僕にがんばれと励ましの声をかける。
「なんかわからねーけど、大丈夫だぜ! 失敗してもおれたちがフォローする!」
セブンがそう言ってくれたので、僕は覚悟を決めて前に出る。
だんだんと近づいてくるオーガは、やっぱり迫力があった。でも、やるしかない。
僕は『イメージ』する。
多くのモンスターを倒すには、広範囲に雷を放つんだ。
右手に意識を集中する。
その魔法の名が、僕の頭に思い浮かんだ。
「──【サンダーボルト】──」
激しい発光。雷がオーガたちに向かって放たれた。遅れて聞こえる、轟音。
オーガたちモンスターは声も上げずに霧散していった。
「……すげえ。一瞬で……」
「雷に耐性のないモンスター相手なら、初級ダンジョンに敵はいないでしょう」
僕は震える手をみつめる。
こんな力を得られることができたなんて……夢みたいだ。
「あの、キースさん……ボク、またレベルあがったみたいです」
「……何!?」
キースさんが慌てて、昨日買ったというニコルの冒険者手帳を開いた。
「本当だ……レベルが1上がってる。それだけじゃないな……上限が5から10になっているぞ」
メタル系のモンスターを倒した時にレベルの上限があがるのではないか……というのがキースさんの見解だった。
「ダンジョンマスターを倒しても上限が開放される……のか。直接じゃなくて、パーティの誰かが倒しても」
「ユーリ。ニコルのステータスに何があるのか詳しくわからない?」
ユーリは少しだけ首をふるふると振った。
「何か、扉のようなものが見えます。それは私では開けられない鍵がかかっているようです」
「鍵、か。メタル系モンスター、ダンジョンマスター……もしかしたら、条件はいくつかあるのかもな」
わからないことは多いけれど、ニコルは自分が成長する喜びを嚙みしめているようだった。わからないといえば、どうしてニコルは冒険者になったんだろう。冒険者になるにはまだ早い年齢だ。早いにこしたことはないのだけれど、『早すぎる』と思う。
「下に行く階段みつけたよー!」
うろちょろしていたブルーが、最後の階層に行く階段を見つけたようだ。
僕たちは10階層へと進んだ。
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