第8話 北の大ギルド、新生
「あ、セブン、こんなところにいたー!」
ぴょいんとスライムが飛んできた。ってスライムがなんでここに!?
「あー、構えなくていい。おれの仲間だ。ブルーってんだ」
セブンがぽよぽよとスライムをたたく。
続いて、本の挿絵で見たことがある『魔女』のような恰好をした少女がやってくる。
「私としたことが、使命を忘れて本に没頭するなんて……しかし、あの本、借りたかった……ぶつぶつぶつ」
「おぉ! おぬしもわしのギルドに入ってくれるのか!」
「はい? いえ、私は使命を果たしにきただけ。いや、ここを調査するのにギルドに所属した方がなにかと便利? ううん……でも、あの本。ぶつぶつ」
「本? 本が好きなのじゃなおぬし。そうか、あの図書館に行ったのか。あそこの館長とは仲がよいから、おぬしを司書(兼冒険者)にしてやることもできるぞ」
瞬間移動したかのように、魔女風の少女がソフィさんの前まで移動してきた。
「……本は」
「え?」
「本は借りられますか」
「うぬ。もちろん、いくらでも」
「あなたのギルドにはいりますよろしくおねがいします」
「歓迎するのじゃ!」
2人は固い握手を交わした。
「えー! セブン、冒険者になったの!? いーなー、ぼくもなりたいなー!」
「しゃべるスライムとは珍しいのぅ! おぬしも入れ入れ! 今日からおぬしも冒険者じゃ! 世界初じゃな、スライムが冒険者になるのは!」
「やったー!」
スライムのブルーはぽよぽよはねて喜んでいる。
「……なんか人がワラワラいたと思ったら、みんないなくなっちまったな。ここに集まっていたみたいだが」
「なんだったんでしょう」
右ほほに傷のある背の高い男性と、きれいな金髪の少年がやってきた。
「おぬしたちもギルドに入ってくれるのか! そうなんじゃな!」
「あん? 何のことだ? オレたちはたった今、この中央都市までやってきたばっかりで何もわからねーんだが」
僕は2人にここまでの状況を説明した。
「ふーん……なんかとんでもねーことがあったんだな。しかしそんなギルドに入って大丈夫なのかよ」
「……キースさん。ぼく、ここに入りたい、です」
「え? ニコル、よく考えた方がいいぞ。もっと他を見て回ってだな」
ニコルと呼ばれた金髪の少年は首を振る。
「買収だなんて、そんなとんでもないことをする人が、ぼくなんかを冒険者にしてくれるとは思えないんです」
「そこのギルドは除外するにしてもだな。ここは広い。きっとオレたちに合うギルドが見つかると思うぜ」
「それでも……ぼくは、ここがいいんです。うまく説明できないんですけど……えっと」
「──理屈じゃ、ねーんだな」
金髪の少年が頷く。長身の男性は困ったような顔をすると、少しだけ笑って、少年の頭をわしゃわしゃと撫でた。
「オレは【死神】キース。こっちはニコル。世話になるぜ」
「……死神! あの、噂のパーティキラーか!」
「ああ。不幸を呼ぶ男だ。怖いなら、ギルドに入れることを考え直すことだな」
「しかし、そっちの少年はおまえさんのパーティなんじゃろ?」
「ああ。よくわからんが、こいつと組んでいれば悪いことばかりは起こらないらしい」
「じゃあ、大丈夫じゃ! ようこそ、わしのギルドへ!」
「……なるほどな。アンタ、ただものじゃねぇってわけだ」
「そうじゃよ? そんなことよりもまずは『契約』じゃ! おぬしら、こっちへ来い!」
ソフィさんが駆けていく。そしてべちっとこけた。鼻血がでたけど、笑っている。ちょっと怖い。
僕たちはソフィさんの後に続き、その建物へ入っていった。
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