第7話 高齢のルーキー……(;_:)
セブンが首をかしげて言う。
「で、今のはなんだったんだ? 新しい見世物だったのか?」
「い、いや、違うと思うよ」
僕たちの話声を聞いて、ソフィと呼ばれていた女の子がバッと顔を上げた。目が真っ赤で、涙と鼻水で顔がべちゃべちゃだ。
「お、おお! おぬしたち、残ってくれたんじゃな!」
「い、いや……僕はここの冒険者じゃなくて。ルートっていう町から来ました」
ソフィさんが目を丸くする。
「ルート……? おお! わしが愛用しているぼでぃそーぷを取り寄せておる道具屋があるところじゃな!」
「あ、そこ僕の実家です。あのソープは僕がつくりました」
そういえば、いつも中央都市から注文入っているアイテムがいくつかあったなぁ。
「なんと! あれはいいものじゃ! おぬし、いい腕をしておるの! ん? では冒険者ではないのか」
「いえ、家族に道具屋は任せて、僕はルートで冒険者になりました」
「今は確か……泣き虫ゴッツがギルドマスターをつとめているんじゃったな。すると、おぬしが【高齢のルーキー】か!」
高齢のルーキー……その通りなんだけれど、そう2つ名っぽく言われるとちょっとせつない。それに泣き虫? ゴッツさんが?
「おぬし、名は?」
「アレンです」
「アレンよ、わしのギルドに入ってくれー! お願いじゃー! イイことしてあげるからー、たのむのじゃー!」
ソフィさんが僕によじ登って胸倉を掴んで揺さぶる。
「い、いや……あの。僕なんかが中央都市のギルドに入るなんて……そんな大それたこと……」
なんかすごいことになって、ほぼ解散状態になったとはいえ、ここは中央都市の大ギルドとして認定されたところ。そこに所属するなんて、高齢のルーキーには荷が重いというか心が重いというか。
ぽん、と僕の肩をセブンが叩く。
「若人よ。何事も挑戦だぜ」
「いや、その、そんなに若くない……」
「おれにとっちゃ若い若い! っておれ何歳かわからんけど、この姿でももう50年は生きていたはずだぜ!」
「そうだよ、アレンちゃん! 大ギルドに所属しているってだけでもステータスになるし! 色々と優遇受けられるし!」
ようやく拘束を解いたエクレールがぶんぶんと僕の周りを飛んでいる。
エクレールの目も、赤い。アイリスがあんな風に去ってしまって、ショックは大きいことだろう。
「それじゃ……ぼ、僕なんかでよければ、お願いします」
「やったーーー! ありがとうなのじゃー!」
こうして僕は、北の大ギルドへと加入することになったのだった。
「そっちのかっこいい黒騎士殿も、ついでに入ってくれんかのぅ? 入ってくれればうれしいのう。わし、大喜びじゃのう」
ソフィさんがつめるつめる。
「あー、いや、んー、どうなんだろ。あいつ、そういえば北のギルドに所属うんぬんっていってたな。でも勝手に……いいんかなぁ。それにおれ、こんなんなんだけどいいのかね」
セブンは兜の面をぱかっと開けて見せる。
「ぎゃー! おばけー!」
「おばけー!」
「あばばばばばb」
エクレールの電撃を受けてセブンが痺れる。
「っておまえ、さっきも見ただろおれのつら」
「でも怖いのよそれ」
「まー、そうだろうけどよー」
セブンは痺れながら面を戻した。
「おぬし、モンスターじゃったのか。すると、居住区の?」
「おう。昨日来たばかりの新入りだ。来たというか、いたというかよくわからんけど」
「……ふむ。前倒しになるが、よいじゃろ。モンスターでも構わん! おぬし、わしのところで冒険者となれ!」
「おっ、いいのか? 居住区暮らしはなんだかつまんなそーだけど、こっちの方はオモシロそーだ!」
何か思い出すかもしれねーし、やるぜ! とセブンが続けた。
「おぬしら、ありがとうー! わし感激!」
冒険者2人しかいないギルド。まぁ、僕にはちょうどいいのかもしれない。
そんなことを思っていると、そこに──。
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