第4話 落下からはじまる、物語

「セブン、おはよう!」

「お? お、おう」


 朝?

 寝ていたのか、おれ。眠れるんだな、おれ。


「ユーリ、もう起きてるよ! いつでも出発できるって!」

「そうか……ってまて。案内って、おれたちが案内するわけじゃないよな」

「?」

「いやいや、居住区が設けられているから寛容なのかもしれねーけど、おれたちモンスターがそこらへん出歩いてたら問題になるんじゃねーか? 特におれなんて見た目がアレだからやべーぞ」

 ガイコツが昼間の町を歩いてたら大騒ぎになるだろ。


「そんなこともあろうかと、お前にこいつを用意してきた」

 いきなりミノさんがずいっと家に入ってきた。脇には黒い鎧を抱えている。

「これを着て入れば、お前の姿を見て驚く人間はいないだろう」

 いや、これはこれで目立つような気がするんだけども。まぁ、いいか。おれはその鎧を着てみた。サイズ感はちょうどいいな。

「これもミノさんがつくったのか、まさか」

「ドワーフの親方にお前に合いそうなのをもらってきただけだ」

「へぇ……」

 ドワーフもいるのか、ここには。


「わぁ! セブン、かっこいい! いーなー!」

 かっこいいのは鎧であっておれではないのだが、ブルーははしゃいでいる。

「せっかくの機会だ。人間たちの営みを見学してくるといい。ここは中央都市。世界の中心ともいえる場所。色々な情報も集まる」

 もしかしたら、おれの記憶が戻るきっかけになるかもしれない、か。


 そこにユーリが2階から降りてくる。

「準備はできたようですね。それでは行きましょう」

「ああ。ところであんたが行きたいところってどこだ?」

「それは──」

 ユーリの表情が不気味にゆがんだ。なんか笑みを押し殺しているみたいだった。


 この魔女っ娘が行きたい場所。

 それは──



 図書館。


「こ、ここが世界最大の! 図書館っ! でっか!」

 冷静そうなキャラクターが崩壊している。ユーリはぴょんぴょんと飛び跳ねて、図書館の外を隅から隅まで見渡そうとしている。

 図書館というよりも、宮殿というか、とにかく馬鹿でかい建物であることは間違いないな。

「すごいねー! ぼくもここに来たかったんだ!」

「ここ……自由に入ってもいいんですか?」

「えっとね、借りたり持ち出すのはギルド員じゃないとダメらしいけど、入るのは誰でも大丈夫だよってフィーナが言ってた! みんな、ここで勉強したりしてるらしいよ!」

 おれに抱えられた、ぬいぐるみ?のふりをしているブルーがしゃべった。

「それじゃ、ちょっとだけ……」

「ぼくも行くー!」

 おれはいいかな……。

 おれはユーリにブルーを預けて、別行動することにした。


 とはいえ、どこに行ったもんかな。広すぎるし、人間もわらわらいるしわけがわかんねー。

 



 その時だった。



 おれが人間に『ねられた』のは。



 空を少しだけ近くに感じて、おれは落下していった。


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