第2話 ふたりの旅立ち
「──中央都市!? あのの世界最大のダンジョンと世界最大の冒険者ギルドがあるところですか!?」
ニコルの目が輝く。
「ああ。ここはあの痩せ犬……ヨギみたいな、どうしようもねぇ輩が多いからな。中央都市のどこかのギルドに所属できれば、そこの冒険者たちに庇護してもらえるだろうしな。オマエの、
これまでのオレなら、中央都市に行くなんていう選択はありえなかった。
【死神】の悪名は中央都市でも知られていて誰も寄ってこないだろうし、そもそもの冒険者のレベルが違いすぎる。
しかし、ニコルとパーティを組めている今、何かしらの道は開けるだろう。そんな予感がする。
これからもオレの償いは続く。オレだけがのうのうと生きていていいのか、今でもわからなくなる。それでも。オレは冒険者としてのオレを思い出してしまったから。もう一度……挑戦してみたくなってしまったから。
だから、オレは生きる。生きていく。
「どうして……キースさんはボクに、こんなに優しくしてくれるんですか?」
「ん? オレが優しいかどうかはわからねえが……オレはオレの育ての親だった冒険者の教えに従っているだけだ。仲間は大切にな……って」
「……仲間。ボクなんかが、キースさんの仲間で、本当にいいんですか?」
「オマエは堂々とオレの隣を歩いていればいい。なんたって、この死神とパーティを組んで生き残っている冒険者だ。それだけでも十分すごいことだぜ」
ニコルはオレにぎゅっと抱きつく。
「ありがとう、キースさん!」
なんて表現していいのかわからないが、悪くない気分だ。オヤジもこんな気分だったのかな。
「ここから中央都市までの道のりは長いぞ。まぁ、ちょっとした冒険だな」
「……冒険! 楽しみです」
「オレもだ」
オレの不幸がニコルと出会って何かしらの変化を起こした。それが何なのかはよくわからない。ニコル以外とパーティを組んだらまた元通り、オレは死神に戻るだろう。そう感じる。
今後どのような出来事が起こるか想像もつかない。まぁ、考えてみれば人生ってやつはそんなもんか。先のことなんてわかりゃしないもの。そうだろ?
もう少し。
もう少しだけ、オレを冒険者でいさせてくれ。
オレは亡き仲間たちに願う。
「よし。それじゃあ、出発だ」
「はい!」
そして
冒険が、始まった。
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