パーティー当日 入ってきたのは・・・
俺が割って入ったのて、平手は俺が受けることになった。「ヒロ!」ケイの悲鳴のような声がする。俺は「大丈夫だよ」と素に戻って答えた。俺の声を聞いてその男は「お前男なのか」と言った。「そうですよ」と俺は返した。その男はわなわなと震えだし、声も出なくなったようだった。
「失礼致しました。橘社長ですよね。私の社の部長から聞いてませんでしたか、私が慧様のパートナーを務めるって」と俺は畳みかける。「私が女役、慧様が男役をやるとは思っていなかったんでしょう。私が慧様の提案を受け入れ男女の役を逆転して踊ることを決めたのは、慧様が橘社長の力になりたいと思っていることを知ったからです。橘社長に話をしても女だからと話を聞いてくれないと。それで、男女逆転で踊ることで、橘社長に男だから女だからと言う考え方を改めてもらいたいと慧様は願っていらっしゃるんですよ」と俺は社長に言った。
「そうよ、今時女だから男だからって古いのよ」と桧山先生が続いて言った。
「私が手を貸したのも、慧さんの思いを知ったから。橘さんの力になりたいと言っても、相手にしてくれないって悲しんでいたから。一人娘がかわいいのは解るけど、慧さんがやりたいって言ってるんだから、受け入れるのが本当の愛情ってもんじゃない?話もよくきかず頭ごなしに『ダメ!』と言うのは違うと思うよ」と桧山先生。
「私はお父様の力になりたい。それは
橘社長はは3人から続けざまに言わても何も言わない。状況を把握するので精一杯のようだ。
「橘社長」俺は静かに話しかけた。「慧様はあなたのことを嫌っているわけではありません、せめて話をしっかり聞いてもらえませんか?お互い相手のことを思っているのにすれ違っているようですから。お願いします」と俺は頭を下げた。
橘社長は深呼吸すると「話は解った、只、今はパーティの最中だ後で話そう。慧、着替えて接客をしなさい」と言った、ケイは「はい、着替えたらすぐ行きます」と答えた。
橘社長は俺の方を向いて「たたいて悪かった。手当をしてもらいなさい」と言って部屋を出て行った。
ケイは素早く着替えると、「ありがとうございました」と俺たちに向かって一礼し、「ヒロ本当に大丈夫?」と言った。
俺が「大丈夫だよ、早くお手伝いに行って」と答えるとケイは部屋を出て行った。
部屋には、先生と俺が残された。「ヒロ、まずお化粧を落として着替えましょう。そして頬の状態を見るから」と先生が言って、俺はお化粧を落としてもらいスーツに着替えた。
頬の状態を見ていた先生は「あまり腫れないとは思うけど、冷やした方がいいわね」とタオルを水で濡らして持ってきてくれた。俺はそれを頬にあてしばらく冷やすと痛みはかなり引いた。これくらいなら数日中には治るだろうと思った。
「でもビックリしたわ、橘社長にあれだけ言うなんて」と先生は呆れたように言った。
「ケイが言っても聞かないのなら、ほかの人が言うしかないでしょう。話をすることを約束してもらっただけでも安心しました」と俺は答えた。
「そうね、そのとおりね」と先生は呟くように言い、「どうするもう帰る?」と俺に聞いた。
「ハイ、俺の役目は終わりました。やることがないのなら帰りたいです」と俺は答えた。
「送らせるわ。後片付けは私がしておくから」と先生は言って電話を掛け始めた。
「ヒロが帰るの。家に送ってあげて、控室に迎えに来て」と先生が言うと「承知いたしました」と声が聞こえた。
しばらくするとノックの音がして先生がドアを開けると「お迎えに参りました」と運転手が立っていた。「桧山先生いろいろとありがとうございました」と俺は先生に礼をして運転手について部屋を出た。
運転手は家の近くまで送ってくれた。俺の頬は痛んだが、終わったやり遂げたという充実感で心は満たされていた。
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