パーティーまで最後の週

日曜日、俺は起きてから一通り家事をやって、身支度をすると公民館の個室を借りに出かけた。個室は安いし、机を寄せれば十分練習するスペースができる。2時間ほどそこで練習して、その後スーパー銭湯に出かけた。一応アパートのお風呂に毎日使っていたが、足を延ばせないので、疲れを本格的にとるなら大きな湯船につかった方がいい。

スーパー銭湯で、俺はこわばった筋肉をほぐし、柔らかくなるまでマッサージした。これはバスケをやっていた学生時代に先輩に連れてこられて覚えたことで、全身の筋肉がリラックスできるし疲れが取れる。ゆっくりとそこで過ごして、買い物をしてアパートに帰った。

夜まだ遅い時間ではなかったが、電話が鳴った。「はい宮原です」と電話に出ると「ケイです、今大丈夫ですか?」とケイからの電話だった。

「大丈夫自宅だよなに?」と俺

「今週の練習の事なんですけど、月曜日と水曜日しか取れそうにないの」とケイ。

「解った、月曜日はいつもの貸しスタジオで、水曜日は先生のスタジオで練習するでいいのかな?」と俺。

「その通りです」とケイ「それと~・・・・」ケイは少し言いよどんだように言葉と切った。

「どうしたの」俺が尋ねると、

「ヒロにはいろいろと迷惑ばかりかけて、私の我儘わがままに付き合ってもらって、当日も踊ったらすぐ帰らないといけないしで、何かお礼をしたくって」とケイが言った。

「お礼なんていらないよ。おいしいものをいっぱい食べさせてもらったし、俺の知らない世界を見せてもらったからね。それに、これは部長にも頼まれた仕事の一環だから」と俺は答えた。

「仕事?」とケイ。

「俺がケイのパートナーと務めるって決めたら、橘社長から俺の部署の部長に連絡があったんだ。『俺が初心者だから練習時間を取ってほしい』ってね。それで、ケイと会っている時間は出張扱い。だから何の不利益も受けてないから心配いらないよ」と俺は答えた。「俺の事より、橘社長ケイの事大事にしていると思うよ。苦労かけたくないっていう親心じゃないかな。会社を経営する為には色々大変なこともあるし、きれいごとだけでは済まない。それにケイを巻き込みたくないんじゃないか?あくまでも俺の想像だけど。ケイ一人娘なんだろう?」と俺は聞いた。

「そうよ。だからこそ父の力になりたいのに」とケイ。

「だから、お互いがお互いを思いやっているんだけど、それがすれ違っている感じがする。それを打ち破るために今度のこと思いついたんだろ」と俺は続けた「だから今度のパーティが終わったら、とことん話し合うことだよ。4年生って言ってたよね、これからの進路も含めてね」と俺。

「そうね、うん、そうする。ありがとうヒロ。明日練習よろしくね」とケイは少し明るい声で言った。

「じゃ明日、おやすみなさい」と俺。

「おやすみなさい」とケイが言って電話は切れた。


翌日月曜日貸しスタジオでの練習。水曜日先生のスタジオでの最終練習。そしてパーティーの前日、ケイから、明日の待ち合わせ場所と時間がGメールで、桧山先生からは明日用意する物、やっておくことのGメールが届いて、とうとう当日を迎えることになった。

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