化粧直しと、昼食

トイレを済ませ、俺は化粧室の鏡の前に立った。汗をかいたためかだいぶ化粧が落ちている。持参したポーチからメイク道具を取り出し、俺は化粧直しを始めた。

「これじゃ、汗で落ちない化粧品を買わないといけないかも。まあ、1曲踊るくらいなら問題ないが、どうするか」独り言を言いながら10分ほどかけて化粧を直した。

「お待たせ」席に戻ると俺はケイに話しかけた。

「ダンスの基本から載っているビデオよ」ケイはそう言って再生し始めた。「私も男性のステップ見たかったから」ケイはそう言って冷茶を注いでくれた。

「ダンスって結構体力使うのね。鍛えていたつもりだったけど、あちらこちら違うところが痛い」と俺は正直に言った。

「バスケとは違う筋肉を使うもの、でも先生のお墨付きをもらえてよかった」とケイ嬉しそうに言った。ビデオを見ながらお茶していると。ドアがノックされ、「お待たせいたしました」と使用人が注文したハンバーガーをワゴンに乗せて入ってきた。

「間違いがないかご確認いただけますか?」と使用人は言い、ケイは明細と商品をチェックし始めた。そして「大丈夫間違いないわ」と使用人に答えた。「お釣りをお返し致します。何かございましたらお呼びください。ケイ様」と言って、ワゴンから商品を机に並べて立ち去った。

「え!こんなに!」俺は自分が注文していないものも自分の前に並べられて面くらった。「お腹すいたでしょう。遠慮しないで食べてね。あ、そしてこれはお土産。夜までは私付き合えないから、お夕飯のおかずにでもして」と別に箱に入ったチキンが用意されていた。

「いただきます」ケイはそう言って食べ始めた。俺もそれに倣った。ケイはビデオを見ながらいろいろと解説してくれる。気づいたらすべて食べてしまっていた。

「ごちそうさまでした。あ~おいしかった」ケイは笑いながらそう言い、俺も「ごちそうさま、ありがとう」と言い、ケイに「ねえ、映像の資料が欲しんだけど、空き時間に勉強したい」と聞いた。

「家にパソコンある?あればメールに添付してパソコンに送るけど」とケイ。「あるよ、パソコンのアドレス教えようか」と俺。「よかった、私の方から聞こうと思っていたのよ」とケイ。

俺はパソコンのメールアドレスをメモに書きだして渡した。

それからしばらくビデオを見ていたが、3時過ぎになって、「そろそろ帰りましょうか?家の近くまで送るわ」とケイが運転手に電話を掛け始めた。そしてインターフォンのボタンを押し「そろそろ帰るわ。後片付けお願いね」と言うと、「承知いたしました。お気をつけて」と使用人の声が聞こえた。そしてケイの電話に『着きました』と運転手から連絡があった。

「さあ、帰りましょう」そう言って、ケイ靴を履き表に出た。俺も自分の靴を履いて続いて出た。ケイは渡されたカギでドアに鍵を掛けた。

車に着くと運転手がドアを開けてくれた。後部座席の右側にケイ、左側に俺が乗り運転手はドアを閉めると車に乗り込み「ケイ様、ヒロ様の家の近くへ向かえばよろしいですね」とケイに聞いた。「その通りよ」とケイが答え「承知いたしました」運転手はそう答えると車を発進させた。

車の中では俺はあまりしゃべらなかった。運転手であれ、俺が男とばれるのは得策ではない。この運転手はケイのおつきの人みたいだし・・・。ケイもそれが解っているのか無言だった。

俺の家の近くで車は止まった。

「後で資料を送るわ、今日はありがとう、また連絡するね」とケイが言う。

「送っていただいてありがとうございました。また」と俺は言って車を降りた。

俺が降りたのを確認して車は発進した。車が見えなくなると俺は痛む足を引きずりながら家に戻った。

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