土曜日の歩行者天国
土曜日の朝、俺は早めの時間に起きた。朝飯食べて、シャワーを浴びて、準備にかかった。服は長そでハイネック縁取りがレースのブラウスに、膝下ロングのフレアースカート。ネイルは昨日済ませておいた。特に入念に行ったのがメイク。少しづつ女性の顔に変わっていく自分を鏡で見るのが俺は好き。外に出ればメイク直しするときぐらいしか見れないもんな。ウイッグはロングのソパージュ。上の方だけを結んで、バレッタを付けた。そして左手の薬指に指輪をした。指輪をするのは相手がいると解ってあまり話しかけられないのと、もし話しかけられても断りやすくする為。そして最後にイヤリングを付けた。姿見で全身を確認して、小型の女物のバッグに必要なものを詰めて、上着を羽織り、少し高めのヒールで出掛けた。
待ち合わせ場所までは電車で二駅ほど。近くもなく遠くもない距離でもちろん会社とは反対側の方向。駅で降り、通りへと向かった。
その通りは土日祝は全面歩行者天国になる。車道も自由に歩けた。指定された店は歩行者天国の出口付近にある。時計を見ると、10時少し前。やれやれ間に合ったか、外にいるはずだよな、俺はケイを探した。
ケイが歩道に設けられたテーブル席の椅子に座っているのが見えた。近寄って
「ケイ、待った?」と高めの声で話しかけた。
ケイ顔を上げ、少し戸惑ったような顔で「え!ヒロ?」と言った。
「そうよ、見違えた?」と俺は同じく高めの声で答えた。
「びっくりしたぁ、こんなに奇麗になるなんて」とケイ。
「おしゃれして来いと言ったのはケイよ」と俺。
「そうよね、何か飲まない、喉乾いたでしょう」とケイ。
「じゃ、アイスコーヒーをお願い」と俺。ケイは店員を呼びアイスコーヒーを注文してくれた。
アイスコーヒーが来て飲んでいると、ケイが「その指輪・・・?」と聞く。
「あぁ、虫よけ。これしていると話しかけられないから。もう会えたし外すね」俺は指輪を外しバッグに入れた。
ケイが「今日11時にダンスの先生に予約が取れたの、そこまで車で30分ぐらいだから、少し時間をつぶしましょう」と言った。
俺は「私、何も用意してこなかったけど、大丈夫なの?」と聞いた。
ケイは「大丈夫、あなたのことを話したら、先生協力するっておっしゃって必要なもの用意して下さるそうよ。それにしても・・・こんな奇麗な人をエスコートできるなんて、嬉しいなぁ」と言った。
「奇麗って言ってもらえるのは嬉しいけど・・・面と向かって言われるとなんか照れ臭い」と俺は声のトーンを落とさないよう注意して話した。心の中ではガッツポーズ!ヤッタ!ケイを驚かせた!と一人悦に入っていた。
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