慧からの連絡

勤務時間が終わり、家に帰ってスマホを見ると、ケイからの連絡が入っていた。

『土曜日、10時ごろ、メールに添付した地図の場所に女装して来てください』とある。

なんでわざわざGメール?と不審に思った。それにこの場所良く俺が行っているところだ。ケイが指定した場所は土日祝日には歩行者天国になり、歩道にオープンカフェが並ぶところ。その中のお気に入りの店で俺はよくファッション雑誌を読んでいた。ケイに見られていたのか?俺が女装してるのを自分で確認したみたいだし・・・。色々考えていたら電話が掛かった。

着信を見るとケイから。

「はい、宮原です」と言うと、「メール見てもらえました?少し話したいんですが大丈夫でしょうか?とケイが聞いた。「大丈夫ですよ、自宅ですから。それよりなんでGメールなんですか?」と俺は聞き返した。「メールのやり取りを特定されないためです。ラインとかだと、入り込まれたりして情報が漏れる可能性がありますから、それはお互いのためにならないと思いました」とケイは答えた。「待ち合わせ場所は最初ですし、ヒロシさんの行きつけの場所にしました。そこに女装して来てください。おしゃれして、なるべく長いスカートと、なるべく高いヒールの靴でお願いします。私は対照的にごく普通のパンツスーツで行きます。お茶した後車で移動しましょう。ダンスの先生に話をつけておきましたので、ご案内します」とケイは続けた。

「承知しました、ところで私とは女友達として会うんですよね、私はあなたのことをケイと呼びますけど、あなたは私のこと何と呼ぶつもりでしょうか?」と俺。

「そうですね、漢字だけなら『ヒロコ』でしょうが、でもちょっと危険かな?源氏名の方がいいでしょうね。どうしましょう希望ありますか?」とケイ。

「源氏名か・・・。そうだな反応できないのもなんだし『ヒロ』はどうでしょう。お互い言い間違いもなくせそうだし」と俺。

「それがいいですね、そうしましょう。それでは、土曜日の10時に雨が降らない限り、外で待ってます」とケイは言った。

「承知しました、遅れないように行きます。それでは土曜日10時に。おやすみなさい」と俺は返した。

「おやすみなさい」とケイの返事があって電話は切れた。

やれやれ、注文の多いお嬢様だ。電話が切れて俺は思わずため息が出た。

でもしょうがないなぁ部長から頼まれたし、さて、今日は木曜日。明後日会うんだから、何を着ていくかを考えるとするか。気合い入れないといけないな。俺は大変だという気持ちと裏腹に高揚している自分を感じていた。これまでやってきたことの腕試し。絶対ケイを驚かしてやる。

そう決心して、俺は明後日の用意を始めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る