第3話部長からの呼び出し
ある日、俺は部長から呼び出された。平社員の俺が呼び出される理由など思いつかず、部長室の前で深呼吸し、一呼吸おいてドアをノックした。「宮原です参りました」と言うと「入り給え」と部長。「失礼します」と俺は答えて、ドアを開け室内に入り一礼した。部長から「宮原君だね、こっちへ来て」と言われたので俺は応接セットへと近づいた。
応接セットのソファーには部長と知らない女性が座っていた。「ここに座り給え」部長の言われるまま女性に会釈して俺はソファーに座った。
「橘さん、
「あの?私には面識のない方なんですが何の御用でしょうか?」俺は失礼にならないように言葉を選びなら尋ねた。
「今度開かれるパーティーで私のダンスのパートナーを務めたいただきたくお願いに上がりました」と橘慧は丁寧に答えた。「ダンスのパートナーって…?」俺はその答えが信じられなかった。
橘慧は「突然の申し出で困惑されてると思います。こちらの都合ばかり言って申し訳ないのですが今晩ここに来ていただけませんか?その時詳しくお話ししますから、受けるかどうかはその後決めてくだされば結構です」と少し堅苦しい口調で言い俺にカードを差し出した。「私の連絡先はそのカードに書いています。19時までにはお越し下さい」その口調には拒否できないものが含まれていた。
部長の方を見ると目配せされたので、「19時ですね。承知いたしました。伺います」俺はそう答えた。それを聞いた橘慧は立ち上がり「お時間を取っていただいてありがとうございました、ではこれで失礼します」そう言って、一礼すると部長室を出て行った。
ボーゼンとしていた俺に部長が話しかけた。「宮原君、彼女は大事な取引先のお嬢様だ。できれば受けてほしい。会社の方でも配慮はするから、今夜会って明日報告に来てくれ、頼んだよ」と言った。
俺は「承知しました」と答えて、一礼をして部長室を出た。
仕事場に戻りながら、カードを見ると表は今夜会う料亭の名前、地図、電話番号。裏には橘慧の名前と連絡先が書いてあった。「ここって、高級料亭じゃないかまいったな~」と独り言を言い、俺は仕事に戻った。
デスクに戻ると、同僚が「部長がなんて?」と聞いてきた。本当のことは言えないので、「取引先との会食の話だったよ」とそれだけ答えた。「ふ~んそうか」それ以上追及されなくてよかったが、社長令嬢がなんで俺みたいな平社員に用があるのか皆目見当がつかなかった。
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