第47話 可愛いエミリー2

私達がエミリーの側を離れると、すぐにお茶が出てきた。まさにタイミングもバッチリよ。

何人かいる使用人の中でも、この男の人は洗練されてるのよね。他とは全然違う。ここまでの人なら本邸で雇うと思うんだけど。

ランスロット様にお茶を入れるだけの価値はある人だわ。


「アレン様、今日持って来ていた大きな荷物は何が入っているんですか?」

「玩具やエミリーとルーナの服、侯爵にお酒を。街で一緒にいたのは護衛だろうと思って、彼女にも動きやすい服をね。お菓子も沢山買ってあるから、邸の皆で食べるといい。」

「ありがとうございます。」


ミランダや使用人の事まで考えてくれてるなんて。

やはり気遣いが違うわ。


トーマ、全てを見習いなさい。まず、私への気遣いからね。


「侯爵は何時くらいに帰ってくるかな。挨拶出来ればと思ったんだが。ルーナの夫だから、これからは仲良くしたいと思ってるんだ。」

「トーマも喜びます。」


『もうすぐ離縁しますので仲良くしなくてもいいです…』なんて言えない。


「そうだ、ルーナは花瓶に雑草を詰め込んでたのは覚えてるかい?」

「…やはり、アレン様の邸での事だったのですね。申し訳ありません。」

「いやいや、私の家での事など序の口だよ。」


懐かしそうに笑いながらランスロット様が言った。


「……」


何をしたのか知りたいけど、聞くのも怖いわ。


・・・・


アレンとルーナがエミリーの部屋に行くのを見送ってから、ミランダはトーマを探す事にした。



どこから来るのか使用人が誰も知らないという、この体たらく。


可能性が1番高いのは、この前のアダムス伯爵の別邸。愛人は既に到着してて、トーマがそれを拾っていく。


それにかけましょうか。


この役はルーナにやってほしかった。

面白そうだから。


思った通り、ラッセン家の馬車が邸に止まっていた。

ギリギリってとこね。


私は馬車に乗り込む2人を止めた。


「トーマ様、『別邸に来るな』とルーナ様からの伝言です。もし来る場合はは置いて来るよう願います。」


「どう」

聞くのも面倒なので、被せて言った。

「ランスロット・アレン、その名で察しはつきませんか。」

「…っ来てるのか?」

「ええ、もう別邸の使用人は大慌て。」

「……」


「依頼主に失礼かと思いますが言わせてもらいます。その『わきまえのない愛人』か『この国屈指の権力者』…ラッセン侯爵家としてどちらをご所望で?」

「……」

「こんなチャンス、2度とないわよ。その女にはいつでも会えてもね。そうは思いませんか、マイセン執事長様。」


先にこの男を落とせばトーマは折れる。


「トーマ様、今回はお1人でお願い致します。」

「嫌よっ!やっと時間を作れたのよ!トーマっ!絶対に会わせて!!」


トーマは事の重大さが解ってても、愛人に引きずられてるわね。情けない。


あーっ!2人ともクソ面倒くさいっ!


「どちらの家もアレン様を敵にまわしますよ。彼に疑われれば真実などすぐ露見する。構いませんか?」


だめ押ししておこう。


「そう言えば、いつも冷静な使用人が1人いますけど、さすがに焦ってましたよ。『アレン様が来る』と聞いて早馬をだしてましたし。この様子であれば、トーマ様の所へではないようですね。どこから引っ張ってきた男かは聞きはしません、はね。」


やっぱり何かあるわね。

愛人にもう少し演技をおしえたほうがいいわね。真っ青じゃない。


あの男は侯爵でも伯爵家の使用人でもない。動きからして明らかに。

あの男がこの妊娠の鍵を握ってる。ルーナも気になってはいたみたいだし、楽しみだわ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る