第44話 出産祝い2

こうやって口喧嘩ばかりして脅す形でしか前に進めない。


「…始まりが違えば、こうはならなかったのにね。」


「ルーナ?」


「ううん、もう寝るわ。おやすみなさい。」


部屋に戻ってもミランダはいない。


明日は来てくれると思うから、その時に色々聞いてもらおう。


…今日は寝よう。何だか今はマイナスな事しか考えられないもの。


少し疲れたので、ベッドにドサッと転がった。




コンコン


「……ん…?」

「奥様、お目覚めでしょうか?もし体調がすぐれないようでしたら医師を呼びますが。」


医師…?

「…大丈夫よ。」

何故そんな事を聞くのかしら。

何気なく時計を見ると11時すぎ…。寝てしまったのね……。朝まで……。

私、この前から寝坊し過ぎよ!!


急いで服を着替えて階下へ。


顔を洗って皆のもとへ行くと、とても心配そうな顔をしている。


「ごめんなさい。激しく寝坊してしまったわ…。」

「いえ、構いません!奥様のお体が1番ですので!!」


私はどういう状態だとこの邸の使用人に伝わってるのかしら。乳母がいないと駄目…ってくらいだから、悪い方へ想像するのね…。


「あの、たった今奥様宛にお手紙が。差出人が書いてありませんが、こちらで1度確認いたしましょうか?」


「いえ、大丈夫よ。」


手紙には危険な物が入ってる事もあるから、皆心配してくれてるのね。この邸は、トーマ以外は皆素晴らしい人なんだわ。


「部屋で手紙を読んでからまた下りてくるわ。その間に何か軽く食べられる物を用意しておいてくれるかしら。」


「畏まりました。」


「ありがとう。」



部屋に戻って手紙を見て、私は凍りついた。


差出人はランスロット・アレン…と書いてある。


『無事出産おめでとう。もし可能であれば6日に伺いたい。暫く国を離れる予定だ。その前にぜひ君と君の子に会えればと思う。』


「……6日って…明日だよね。」


非常にまずいわ。

エミリーはここにいないんだもの!


「ねぇ!この手紙は郵便で届いたの?」


「はい、たった今。」


今日手紙を出しても、届くのは最短で明日。間に合わないわ。


「何か大変なご用でしたか?」


「ああ、ううん。大丈夫。今日はトーマは何時頃帰って来るの?」


「今日は仕事先でお泊まりになるとの事で。」


もしかして愛人の所?それならいいの。話を伝えられるから。


「行き先はベツタだと伺っております。」


「…そこって遠いの?」


「はい。」


こんな時に限って本当に仕事だなんて…。

これは大ピンチよ…。


アダムス伯爵令嬢が明日エミリーに会いに来る。


ランスロット様は明日この邸に来る。私がここにいて子供がそう遠くにいるはずがない…って思うよね。

会わせられません…なんて言えない。この国一番の貿易商、屈指の権力者、お金持ち。

……そして私に花瓶を奪われた被害者。

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