第34話 酷い女1
愛人がいる邸に、ミランダと私、トーマとマイセンさんの4人で来た。
『2度と子供に会わせない。』
トーマにとって、これは困るのね。『会いたい』って泣きつくでしょうし、そうしてあげられると思ってる。
「話したい事は決まってるの。大して時間はかからないから。」
私と2人きりで話をさせるのは怖かったのか、トーマもマイセンさんも部屋に入ってきた。マイセンさんが入ったのを見て、ミランダもスッと入ってきた。
部屋には、金髪で茶色の瞳の華奢な女の子がいた。
「知ってると思うけど、私はルーナ・ラッセンよ。少し話したい事があって来たの…。」
「……」
『怖い』って言って泣きそうだわ。
「あのね、貴女がトーマと子を作ろうとなんだろうと構わないの。」
「……」
「けれど、子供には2度と会いにくるべきではないわ。」
「…どうして」
「貴女は邪魔者なの。」
「っ!?」
「ふざけるなっ!!邪魔な訳ないだろ!」
トーマが庇うように私と愛人の間に立った。かなり怒っているようだけど、気にしないわ。
「邪魔でしかない。だから私が必要だった。そうでしょ?」
「ふざけないで!!私の子供よ…会いに行って何が悪いのっ!!」
涙を浮かべながら言われるのは辛いけど、本当の事は言うべきよね。
「…もう貴女の子ではないからよ。」
「……っ」
「私とトーマは年内に離縁するわ。」
「…離縁?」
「ええ。その後、トーマは誰かと再婚する。『前妻の子』というだけで虐められる事だってあるのよ。」
「……」
「それが『愛人の子』だと知ったなら、そのリスクは上がるの。もし何かあった時、貴女は全てを捨ててでもエミリーを守る勇気はあるの?今、既に逃げてるのに。」
「ルーナ、俺は再婚はしない。」
「そう。なら話は終わりよ。」
「っ酷い!あなたは子供を産んでないからそんな事が言えるのよっ!!」
「ええ、私は結婚もしていない男と子供を作るような事はしないし、そうなったとしたなら子を選ぶわ。」
「それが出来ないから困ってるんじゃない!」
トーマもこの子も自分勝手だわ。似た者同士って事かしら。
「私と離縁した以降の事を考えて2人で行動して。邸に一緒に来てほしかったのは、それを言うためよ。」
「…本当に離縁するの……?」
「ええ。」
「トーマっ!本当なの!?」
「…まだハッキリとは決まってない。」
ハッキリ決まってないんじゃなくて、にげてるんでしょ…。
「私がずっとラッセン夫人を演じていれば、貴女はいつでも子に会える…って都合よく考えているかもしれないから、早めに伝えておくわ。」
2人とも、痛いところを突かれたって顔ね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます