第33話 追加3

勢い余って言ったけれど、しくじった…。


「愛人を子育て要員として雇う…とか言ってたのに、2度と会わせなくしてどうするの…」

「いいのよ、あれくらい言ってやんなきゃ馬鹿は治らないわ。」


さすがミランダ、容赦ない!


「あの邸、誰の所有物か解ったわよ。」

「だれ!?」

「アダムス伯爵。よほど家が好きなのか、クッションに紋章が刺繍されてたのが見えたわ。」

「相手は伯爵令嬢か…」

「アダムス夫人かもね。」

「……どちらにしても、子育て要員に勧誘は出来ないわね。」


がっかりだわ。




次の日

私はすこぶる機嫌が悪い。


「愛人はどこ?」

「ここには来ない。」

「私は連れてくるようにと言ったのよ。」

「体調が良くないんだ。」

「昨日の時点で言ってくれたら私が向かうのに。」

「体調がよくないのに、そうやって責めるつもりか?」

「責める?私が本当の事を言って『責められた』だなんて笑えるわ。彼女にとって出産は責めなの?」

「お前なんかに関係ない!」


「…では、誰が関係あるのかしら。偽装させられた私?それとも馬鹿な当主?おろかなアダムス伯爵令嬢様?」


彼女の名前を出すとトーマの顔色がかわった。ちょっとした勝負に出てみたんだけど顔に出すぎよ。


「当たってたみたいね。正体を知ってるのだから、今ここで話し合わなければ私はいつでも単身で伯爵の元へ乗り込めるのよ。という身分を使えばね。」


「もう母親はルーナになってるんだ。誰が何を言おうと彼女は関係ない。」


これじゃ話がすすまないわ。


「では、2度とエミリーと会わないという事を理解してくれたのね。」

「…何故そこまでする必要がある。」

「それを言いたいからを連れてこいと言ったのよ。」

「はぁ…わかった。会わないように言う。」


そう言っておけばいい…って思ってるのがありありと感じられるわ。残念な事に私は貴方の言葉を信じないのよ。


「この誓約書にサインを貰ってきてくれるかしら。私は母親だもの、従ってもらうわ。嫌なら即離縁よ。」


トーマは私が虐められてた憐れな伯爵令嬢だと甘く見ているようね。


「お父様のお友達は口を揃えて言うわよ。『彼女ルーナの事はよく知ってる』ってね。…ランスロット様もその1人よ。貴方、庇う女を間違えない方がいいわよ。」

「…っ」

「…連れていってもらうわよ、エミリーの母親の元へ。」


悪戯ばっかりしてた我が儘娘だから、たぶん皆忘れないわ。

名前を聞けば『あの我が儘娘か…』ってね。

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