第31話 追加1
「ふぎゃあふぎゃあ…」
小さく、まるで猫のような泣き声を聞く度に私は焦る。
「ミランダ!どうしよう!!何故泣いているのっ!?」
「お腹すいてるんじゃない?」
「じゃあ、アナを呼んでくるわっ!!」
「奥様、落ち着いてください。ただ眠いだけです。」
「…そうなのっ!?」
首のすわってない赤ちゃんを抱くのも怖くて出来ない私は今のところ役立たず!
ミランダは甥っ子3兄弟で結構馴れてるのよね。
「子育て要員として頑張るけど緊張し過ぎて……」
「から回りしすぎ。」
ミランダ、厳しい!!
「奥様、焦らなくて大丈夫ですから…。」
私が1人でわちゃわちゃしてるのをみてカルラさんが言った。
「…子育て要員失格よ。」
「初めは皆オロオロするものです。」
そうだよね。命を授かって産む。これは人生で沢山経験出来る訳ではないもの。だから教えて貰わないと進まないわ。
そう思うけど、教わっても教わっても抱っこするのが怖いのでした。
「はぁ…やっと寝てくれた。」
今は夜8時。疲れる…。
「またすぐに起きるわよ。」
「覚悟してます…。」
子育ての給金っていくら貰えるのかしら。
そもそもメイドっていくらくらいの給金なの?
相場なんて聞かずに吹っ掛けてやるわ!!
「ところでさ、トーマ・ラッセンはいつやって来るの。」
ここで2週間がんばって、そこから邸に戻る予定なんだけど、あの男は1度も現れない。
「トーマ様は仕事でここには来れないそうです。」
「そう、仕事ね。」
ご機嫌とりで週に1回山小屋に来ていた男なのに、ここへ来るのが出来ない訳がないわ。
…まさかもう愛人の所にいってるとか?
大いにありえるわ!
これは、私は怒ってもいいわよね。両親が大切な子供を放置してるんだからっ!
「ミランダ、1度トーマに会いに行くわ。」
「いいけど、もし愛人がいたら修羅場よ。」
「どちらかというといてくれた方がいいのよ。」
「それもそうね。面白いから。」
面白い…さすがミランダだわ。
「数日前まで私達がいた邸、トーマはきっとそこにいると思うの。」
「それは当たりよ。ここに来た時、私達と入れ代わりで馬車に誰かをせる音がしていたから、それが愛人のはず。」
ここに来た時に鋭い顔をしてたのは、それを見ていた…というか、聞いてたのかしら。
「ここ数日4頭立ての馬車が何度か走ってるのも見たわ。トーマ・ラッセンよ。」
「……」
ミランダは何でも知ってるわね。
「さて、いつ乗り込む?」
「今すぐによ!」
ガツンと言ってやるわ。
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