第30話 再び3


山小屋からこの家に移って2週間…。


「ミランダ…暇すぎて死んでしまいそうよ。」

「山小屋にいた方が楽だったわね。」

「ほんと、その通りだわ。」


この部屋から出るな…という事で、真面目なな私はいう事をきいているのだけど、さすがに辛いわ。…もう少しで我が儘ルーナが出てくるわよ…。


「ねぇ、この建物に愛人がいるのかしら?いたら乗り込むわ。」

「子供の泣き声も聞こえないからこの家にはいないでしょうけど、近くにはいるはずよ。」



コンコン

「マイセンです。」


ここに来てから、1度も来る事がなかった執事長がきた。


「産まれたんですか?」


ここに来るとすればそれしかないよね。


「私に付いてきてください。」


何も答えないけど、『産まれた』という事よね、これは。


馬車に詰め込まれて500メートルほど離れた家に連れてこられた。


「これくらい歩けばいいのに。」

「距離じゃなくてルーナを隠したいって事。」

…なるほど。

「あの山小屋ほどではないけど、この辺りも人が少ないから誰も気が付かないと思うけど…。」


馬車から見た様子じゃ、ポツンポツンと家があるだけで人が住んでる様子もあまりなかった。


「ミランダ、家に入りましょう。」

「……」

「ミランダ?」


馬車をおりたミランダは鋭く何かを見ていたけど、すぐに私の方を向いた。


「行こうか。」

「うん。」


何を見ていたんだろ?




案内された部屋にある小さなベッドには赤ちゃんが寝ている。


「…小さい。……女の子?」

「そうみたいね。」


……手も足も顔もプクプクしてて可愛い。もぉ全体的に可愛い…!これがあの男の子供だなんて、あってはならない事よ!


トーマに似ている要素がいくつあるかが心配…。私にもトーマにも似てなかったら『愛人の子』ってすぐに分かるもの。そうなれば、くだらない偽装の意味もなくなる。


「いつ産まれたんですか?」


これは大切な事よ。


「奥様な小屋を出た次の日の夜に。」


離縁の日は決まったわね。1つ前進よ。


「…この子の母親は?」

「ここにはいません。」

「何故?別に今はいいじゃない。まだ目も見えない、耳も聞こえない。暫くここにいたとしても大丈夫だわ。」

「既にこの子はラッセン家の子、トーマ様とルーナ様の子です。手続きもすませております。」

「手続き…それは仕方が無い事だけど、それとこれとは別だわ。」


何もわからない間に母親と引き離そうとしてるのね。

酷い人達だわ。



マイセンさんがいなくなって5分ほどすると、女性が2人部屋に入ってきた。


「今日から子育てのお手伝いをいたしますカルラです。」

「私は乳母のアナです。よろしくお願いします。」


カルラさんは私を師匠の家に迎えに来た人だわ。


「こちらこそ。」

ミランダも私の後に挨拶にして、私達が使う部屋に案内してもらった。

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