第29話 再び2
この小屋での時間も勿体ないから、弟子入りの初歩として色々育ててみる事にした。鉢に苗やお野菜の種を植えて、観察日記までつけようと企んでいる。
「何故ここに来てすぐに始めなかったのかしら。」
暇な時間にこれをしていれば、知識を手に入れられたのよ。
「1ヶ月程でここを出ていく事になるのに無駄じゃない?」
「でも鉢植えにしてれば持って帰れるもの。」
「まぁそうね。」
「……ねぇミランダ。愛人は邸で一緒に暮らすと思う?」
「それはさすがに無いでしょう。それじゃルーナで偽装工作した意味がなくなるし。」
「私としては同居して欲しいんだよね。私は子育てはするけど母親になる訳じゃないから。母親になるとしても期間限定の代替え品。だから愛人と過ごした方がいいと思うの。」
「……」
「子供からすればこれは全て親の勝手な訳だし。」
「愛人も子育て要員として邸にくるのを進めてみたら?トーマも喜ぶかもよ。」
「それは素晴らしいアイデアよっ!次にトーマに会ったら早速話をつけるわ。」
小屋でやる事を見つけてから、充実した毎日をおくっていたのに、1週間たってマイセンさんが来た。
「あの、心配しなくても逃げませんから。」
「子が産まれるかもしれませんので、急いで来て下さい。」
「……え?もうですか?」
めちゃくちゃ早いわ。本当に10ヶ月目だったの!?
私とミランダは呆れてそれ以上何も言えなかった。
私達はラッセン邸に帰るのかと思ったら、また別の場所へ連れていかれた。
「マイセンさん、ここに移動する意味はあるのかしら。」
「トーマ様からの命令です。この邸からも部屋からも出ないようにお願いします。食事も全てここへ運びますので。」
「ええ。けれどこちらからも1つ。子が産まれた日は必ず教えて。来年のその日が離縁成立の日になるので。1日も誤魔化されたくないわ。」
私がわざとらしく笑うと、マイセンさんが目を細めた。
「……では、失礼致します。」
パタン
静かに扉がしまった。
「まさか本当に予定日が1ヶ月ほど狂ってるなんて…。マイセンさんの今の落ち着きから見れば大変な事態になってる訳でもなさそうよね。」
「結婚する時にルーナが細くて妊婦の雰囲気がないから本当の事は言えなかったんでしょ。」
…ヒョロヒョロの小枝女だしね。
「…何にしても、結婚して小屋に閉じ込めてる私にくらい伝えればいいのに…。そうじゃなければ後1ヶ月は帰ってこなかったわよ。」
何でも秘密にしておけばいいものではないわ。
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