第21話 策士2

「ルーナ、子育て要員を突き進むなら、侯爵夫人としてパーティーも舞踏会もお茶会も、全て欠席を貫く事。雇い主が王族でもない限り、私はパーティーで側につけないから。」


「そうね。誰に何と言われようともそうするわ。」


いいように使われてたまるもんですか。既に結婚した日からいいように使われてるけどね…。


「予定日って私が聞いてる日より早かったりすると思う?」


「予定日だから…。妊娠したのを本人が気付いてない状態で過ごしてた期間がある場合、

約10ヶ月の計算も数週前になる可能性はあるわね。お腹の出てくる具合で何となくはわかってくるでしょうけど、ルーナのお腹が愛人と同じなら『いつでも産まれます』って感じもするわね。」


「……私と結婚した時、既に何週目だったのかしら。」


「さぁ。でも、最低な男だっていうのは変わらないわよ。」


本当に最低な男だわ。


「けど前向きに考えればいい事かもしれないわ。だって、その分早く農家に弟子入り出来るもの。」


「たしかに、子供が産まれてから1年で離縁なら、前倒しになっていい結果ね。」


「これは早く農家に弟子入りしなさいってお告げよ!!」


「そういう前向きな考え、嫌いじゃないわ。」


「ありがとう。…ねぇ、赤ちゃんは女の子か男の子、どっちなのかしら。」


「愛人の子の情報は全く…」


ミランダが『わからない』と言うように、首を横にふった。


これは重大な問題でもあるのよ。男の子だったら跡継ぎという問題はなくなるもの。怖いのは女の子だった時。息子が欲しいとか言って、とりあえず私に1人子供を産ませとけばいいや…みたいな考え方をされた時よ。

大丈夫、契約書に『指1本触れない事』って書いたしね。


「今日はずっとそのお腹なの?」

「うん…。」



そう思っていたのは私だけで、次の日も妊娠の演出…。

「…こんな事をしなくても変装すれば私だと気が付かれる事はないと思うのですが。」


前に座るマイセンさんに言うと、冷たく返事が返ってきた。


「昨日のような事があっては困りますから。」


もう外出する気なんてないわよ。


「ルーナ…お腹辛くない?」

「かなり…」


お腹が苦しい…

妊婦のふりはしていても、偽物なので馬車は全然スピードを落とさないのよね。


この苦しいのも何もかも、トーマが愛人と子を作ったりするからよ!!


それから1度も外出する事なく3日後にラッセン家の本邸に到着した。

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