第6話 強盗疑惑3

「詳しい話をするから、とりあえず家にいれてくれる?」

「ああ。」

「ルーナ、入って。」

「っお邪魔します!」


家の中は家族写真が沢山飾られていて、ラベンダーのような香りがする。カントリー調でまとまっていて優しくてあたたかい雰囲気。

…さっきの少年の視線はまだ冷たいけど。


キッチンには長方形の大きなテーブルに椅子が6つ。こそに3人こしかけて、話の続きをする。


「で、一体どういう事なんだ。」

「ルーナは私の友達よ。仕事も一段落したし、2ヶ月間ここで一緒に過ごそうと思って。」

「過ごす…と言うが、大丈夫なのか?」


チラリと私を見るお兄さん。

ここで弱い女だって思われたら弟子入りの道が閉ざされる!!気合いをいれないと!


「っ私、農業がしたいんですっ!弟子にして下さいっ!!」

「……弟子?」


『弟子』という言葉に、ミランダのお兄さんがキョトンとしている。


「かまわないでしょ?とりあえず体験で2ヶ月だけ。収穫期だから仕事も沢山あるわけだし、出来る事からやらせてあげて。」

「お願いします!いきなり畑に出たいなんて、そんな大それた事はいいません!!まずは雑用でも何でもやります!」

「こちらとしては助かるんだが…。両親は納得してるのか?」

「両親はもう亡くなってしまって一人なんです。」


最低な夫はいるけれど、別れて他人になる予定だし、ノーカウント。


「ルーナを引き取った人は、彼女を山小屋に詰め込んで外に出れないようにしていたのよ。そんな子を放っておけないでしょ。」

「……」


どうしよう…。お兄さんから返事がないって事は、弟子入り不合格なのかな…。


「…っっそうだったのか。…辛かったんだな。わかった。好きなだけ家にいるといい。」


そう言って、目頭をグッと押さえるお兄さん。これは…泣いてるよね。

チラっとミランダを見ると、笑いをこらえてる。こうなるってわかってたんだ…。


「そうだ、自己紹介がまだだったな。俺はミランダの兄で、アルフィ。ドアの隙間から覗いてるのが、息子のシトロンとメレブだ。妻ともう1人の息子は畑にいるから、また帰って来た時に。」

「はい!よろしくおねがいしますっ!!」

「ああ、こちらこそ。」


シトロン君とメレブ君は、ドアの隙間から覗くだけで全然出てきてくれない…。


「シトロン、メレブ、こっちへ来てルーナさんに挨拶しなさい。」

「いやだ!『ごうとう』とは仲良くしない!」

「しない!」


そう言って、兄弟はタタタっと逃げてしまった。


「すまん。知らない人が来るといつもあんな感じで…」

「人見知りなんですね。」


どうにか仲良くなれたらいいんだけど…。今のところ『ごうとう』だし…。


「私達、離れに荷物を置いて少し片付けしてくるから、リンダ義姉さんが帰ってきたらまた来るわ。行きましょう、ルーナ。」

「うん。」



ミランダが案内してくれた離れは、手入れも行き届いてとても綺麗だった。


「こんな素敵なところを使わせて貰っていいの?」

「素敵って…、貴族の邸と比べた小屋みたいなもんですよ。」

「…ミランダ、敬語は使わない約束よ。ここでは私はミランダの弟子でもあるんだから。」

「いや、違うから…」


この子、弟子って言葉が好きなのかな…。

そう思うミランダだった。

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