第35話 高級品を買いに行こう

 高級品を買いに行こう。






 久しぶりに友達と食事をしたら、あまりに軽装だったからか、そんな服しか持ってないのかと呆れられた。

 彼女が言うには、いい女というものは、高い服を着こなし、高いバッグを持っているものだそうだ。


 わたしはというと、とてもそういう物と縁が近いとは言えない。

 そもそも生まれつき着飾ることに興味がなく、だいたいいつもTシャツにジーンズだし、バッグを選ぶ基準だって見た目よりもどれだけたくさん入るかだ。


 しかしそれではいかんのだろう。


 いや、それではいかんことくらい、わたしだってわかっていた。


 わたしだって女なので、いずれはいい男をみつけて恋愛をしたいし、結婚もしたい。

 今はまだ若いので、仕事が恋人だと嘯いても笑って許してもらえるが、数年後、アラサーとなったらそうもいかない。



 アラサーとなってもいつまでも男っ気がなく、会社の隅っこでパソコンに向かって仕事ばっかりしていては、きっと変人のレッテルを貼られる。



 しかしそれでは、今のわたしが果たして、男を捕まえられるだろうか。


 年中Tシャツにジーンズでも、男に声をかけられるところまではいくかもしれない。

 だがもしそれでデートとなった時に、ファッションをひとそろいユニクロで統一していたらどうだろうか。


 たぶん結婚どころか、恋の花も咲く前に散るだろう。


 べつにユニクロが悪いわけではないが、物事には時と場合というものがあるのだ。



 だからわたしだって、いつまでもTシャツにジーンズでは、薄っぺたのナイロンバッグではいかんと、わかっているのだ。



 友達の言うように、高い服を着こなして、高いバッグを持たないといかんとわかっているのだ。




 だからわたしだって、いつまでもTシャツにジーンズでは、薄っぺたのナイロンバッグではいかんと、わかっているのだ。




 よし、高い服と高いバッグを買いに行こう。

 今度の週末にでも、気合を入れて、ユニクロを卒業する女になろう。


 よし、高い服と高いバッグを買いに行こう。

 幸いわたしは着飾ることに興味がないだけでなく、趣味もお金のかからないものばかりなので、貯金はたくさんある。



 社会人になってこちら、すべての給料の詰まった通帳を武器に、高い服と高いバッグを買いに行こう。




 そしていずれ、高い服を着こなし、高いバッグに呑まれることなく、肩で風を切って歩く女になろう。






 久しぶりに友達と食事をしたら、あまりに軽装だったからか、そんな服しか持ってないのかと呆れられた。

 彼女が言うには、いい女というものは、高い服を着こなし、高いバッグを持っているものだそうだ。



 久しぶりに友達と食事をしたら、あまりに軽装だったからか、そんな服しか持ってないのかと呆れられた。






 高級品を買いに行こう。



 高級品を買いに行こう――!




 ただしいきなり高すぎるものを目にすると、値段に気後れしてしまうので、まずは初心者用からお願いします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る