第34話 ラーメンには世界のすべてが詰まっている

 誰かが言った、「ラーメンには世界のすべてが詰まっている」と。

 誰かが言った、「そんなわけないじゃん馬鹿なの?」と。


 わたしは思う。



 ラーメンには世界のすべてが詰まっているというのは、あながち間違いではないのではと。



 例えばスープだ。

 わたしたち消費者からすると、ただの味と色のついたお湯だが、作り手からすると違う。

 豚骨や鳥ガラ、醬油や味噌だけでなく、いろんな野菜や、魚介類からとれた出汁が詰まっている。


 麺だってそうだ。

 小麦粉だけでなく、塩や玉子、水も詰まっているし、細麺だとか太麺だとか、縮れ麵だとか、店主のこだわりも詰まっている。


 その上ラーメンはスープと麺だけで構成されているわけでなく、トッピングとして叉焼だとか海苔だとか、メンマや煮卵まで乗っているではないか。



 つまりラーメンとは、たくさんの要素で出来ているのだ。




 さすがに世界のすべてがと言ってしまうと、さすがに言いすぎだとは思うが、世界の半分は詰まっているのではないだろうか。






 誰かが言った、「ラーメンには世界のすべてが詰まっている」と。

 誰かが言った、「そんなわけないじゃん馬鹿なの?」と。


 わたしも思う。



 ラーメンには世界のすべてが詰まっているだなんて、そんな馬鹿なことあるわけないじゃんと。



 例えばスープだ。

 作り手のこだわりはよくわからないが、わたしたち消費者にとってはただの色と味のついたお湯だ。


 麺だってそうだ。

 細麺だとか太麺だとか回りくどいが、ようするに単純に小麦粉を水で練っただけのものだ。


 トッピングだって、せいぜい数種類しかなくて、それで世界の成り立ちと肩を並べようなんてとんでもない話だ。



 だが、ラーメンは美味しい。



 ラーメンを食べていると、頭の中がからっぽになり、「美味しい」以外のすべての感情や思考が吹っ飛んでしまう。

 ラーメンを食べているときだけは、世界中が思い通りになるような、世界に人間はわたしだけみたいな、万能感が手に入る。



 ラーメンとはシンプルな料理だが、シンプルゆえに、人を夢中にさせて離さない魅力があると思う。




 そう考えると、もしかしてラーメンと世界の成り立ちが肩を並べるというのも、もしかしてあり得るのではないかと思える。






 誰かが言った、「ラーメンには世界のすべてが詰まっている」と。

 誰かが言った、「そんなわけないじゃん馬鹿なの?」と。



 わたしは言った、「すいません、おかわりください」と。




 御大層な言い訳を考えないと、ラーメンも食べられないのかとおっしゃられるかもしれませんけども――。



 困ったことに、これが実に太るんですワ。

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