第20話 ロープウェイ

 ロープウェイが好きだ。

 山を駆け上がる、ロープウェイが好きだ。


 見下ろして乗れば、景色の遠ざかる様子が、世俗から切り離されていくようだ。



 ロープウェイが好きだ。

 山を駆け上がる、ロープウェイが好きだ。


 見上げて乗れば、空の近づいてくる様子が、まるで天に召されていくようだ。



 わたしは天使になりたい。

 幼いころから憧れていた。


 わたしは天使になりたい。

 他の子たちとは違うのだ。



 わたしは天使になりたい。

 幼いころから憧れていた。



 わたしは天使になりたい。




 すべてのしがらみから解き放たれて、産まれたままの、まっさらさらの身体になりたい。




 ロープウェイが好きだ。

 山を駆け上がる、ロープウェイが好きだ。


 見下ろして乗れば、景色の遠ざかる様子が、世俗から切り離されていくようだ。



 ロープウェイが好きだ。

 山を駆け上がる、ロープウェイが好きだ。


 見上げて乗れば、空の近づいてくる様子が、まるで天に召されていくようだ。




 ロープウェイが好きだ。


 山を駆け上がる、ロープウェイが好きだ。






 生きることは死ぬことの予行練習で、ロープウェイは多分、それに似ている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る