第9話 俺、女の子になります。

 俺の男性たる男性自身が縮んでいく。

 最初はそれなりのサイズを誇っていたのだが、日に日に小さくなっていく。


 俺の男性たる男性自身が縮んでいく。

 最初はそれなりのサイズを誇っていたのだが、今や小学生のそれを下回っている。


 医者が言うには、俺はどんどん、女の子になっていっているらしい。

 最近テレビでちょっとした話題になっているのだが、俗称だが性転換病という、へんてこな病気が発見されたらしい。

 一万人に一人とか、十万人に一人とかの割合で、男が女になるという、そういう病気らしい。



 そして一度女になってしまったら最後、二度と男には戻れないだろうという……。



 つまり、俺はそれなのだ。

 医者が言うには、だから俺はどんどん、女の子になっているのだというのだ。


 もはや小学生サイズになってしまった、俺の男性たる男性自身は、だからそのうち、小さくなりすぎて消えてしまうのだ。



 もはや小学生サイズになってしまった、俺の男性たる男性自身は、だからそのうち、女性たる女性自身になってしまうのだ。



 まあ、別にいいかと、俺は思う。


 なにしろ、俺は俺の男性自身を、持て余してきた。

 使うチャンスなど、今までの人生十六年間、一度もなかった。


 なにしろ、俺は俺の男性自身を、持て余してきた。



 俺ときたら男性自身はともかく、体格がマスコットサイズだったので、可愛い可愛いともてはやされはしても、男として意識はされなかったのだ。



 それならば、性転換もどんとこいである。

 男と男でイチャイチャすると思うとめまいがするが、性転換病で女になった人たちはみんな、意識が女性に引っ張られていくらしいので、問題はあるまい。


 それならば、性転換もどんとこいである。



 俺は女の子になったなら、ちいさくて可愛いだろうので、異性に引っ張りだこになるのだと思えば、困ることなどない。



 思えば一度は、異性をとっかえひっかえしたい人生だった。

 男性自身の乾く暇もなく、ファッション・ホテルから学校に直行するような、そんな生活を送りたかった。


 思えば一度は、異性をとっかえひっかえしたい人生だった。



 男性自身の乾く暇もなく、栄養ドリンクの小瓶にストローを突っ込んで、昨日は三人相手にしたぜなんて、そんな生活を送りたかった。



 それがかなうのだ!

 俺の時代がやってくるのだ!


 それがかなうのだ!

 皆々俺を持ち上げ、俺を抱くべくあの手この手でちやほやしてくるのだ!




 とうとう俺の時代がやってくるのだ!






 俺の男性たる男性自身が縮んでいく。

 最初はそれなりのサイズを誇っていたのだが、日に日に小さくなっていく。


 俺の男性たる男性自身が縮んでいく。

 最初はそれなりのサイズを誇っていたのだが、今や小学生のそれを下回っている。




 俺の男性たる男性自身が縮んでいく。






 医者の言ったとおり、俺は女の子になった。


 俺は俺の思ったとおり、ちいさくて抜群に可愛く、男に引っ張りだこの女になった。



 ただし唯一、想定外の出来事があって、それは――。




 話題の性転換病は、実は強烈な伝染病の走りであり、世界中から男がほとんどいなくなってしまったことだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る