第9話 二人で探索、そしてレベル10

「準備はいいか、春樹」


「…はい、大丈夫です、樹姉さん」


「…い、樹、姉さん?」


「はい、これからそう呼ばせていただきます!」


「……」


…まあ、呼び方なんてどうでもいいか。


翌日、俺たちは蔵の中にあるダンジョン…正確には関東大ダンジョンの入り口に立っていた。


俺はいつものシャベルを持ち、レインコート、あとなぜか靴箱の奥にあったサイズがぴったりな安全靴を履いている。


春樹もシャベルこそ持っていないが俺と似たようなスタイルだ。


「よし、じゃあ…行こうか」


「…はい!」


春樹は緊張気味にうなずいた。


そうして俺たちはダンジョンに潜っていく…








「ここが…ダンジョンですか…」


「どうだ、意外と広いだろ」


「そうですね。意外と広い…」


ダンジョンの階段を下りて一層についた俺たち、春樹は周囲を興味深そうに見渡している。


「随分と殺風景ですね」


「そうだな、二層以降もこの光景が続くようなのは勘弁してほいなぁ」


「全くですね、気が滅入りそうです」


俺たちがそんな会話を繰り広げていると


「ギャ!」


ゴブリンが、現れた!


お、さっそくおでましか


「あ、あれがゴブリン…随分と醜悪な外見ですね」


春樹が顔をしかめている


「ああ、ゴブリンだな…よし!春樹、俺の後ろでフィジカルブーストを」


「はい!」


と、春樹は俺の後ろに隠れると


「フィジカルブースト!」


そう唱える


「きたきたきたー!」


俺の身体能力がついでにテンションが上がる。


「ギゃ!」


ゴブリンが飛び掛かってくる。


テンションの上がった俺は、飛び掛かってくるゴブリンに対して強烈なタックルをお見舞する。


「ちょ、樹姉さん!?」


「ガギャ!」


スキル鬼力を持ち、フィジカルブーストを施された俺の全力のタックルを食らったゴブリンは壁にたたきつけられて、そのまま動かなくなった。


「樹姉さん、何故にタックル!」


「てへぺろ、いやテンション上がっちゃって」


「てへぺろ、ていつの時代の人ですか!全く」


いや、小学生でそのネタ知っている春樹も大概だろうに。まあそれは今はいい。


今重要なのは…


「春樹レベルはどうなった?」


「…!今、脳内に声が響いてレベルが0から1になったと!」


「よし!」


実はレベル上げについて懸念事項があった、春樹はフィジカルブーストを俺に使うだけで戦闘には参加しない。よって魔物を俺が倒しても春樹のレベルが上がるかどうかわからなかったのだ。


しかしその心配はどうやら杞憂だったようで、春樹のレベルは戦闘に参加していなくても上昇した


「これでこのスタイルでレベルを上げられるな」


「なんか、僕だけ戦わないのは気が引けるのですが…」


「気にするな、春樹、お前は十分に戦闘に貢献しているよ」


「そ、そうですか?」


「ああ、頼りにしているぞ、春樹」


「頼りに…は、はい!」


春樹は少し赤面しながらうなずく。なぜに赤面?


「まあいい、とにかく進むぞ」


「はい!」


俺たちはゴブリンを求めさらに奥へと進んでいく








「ギャ」


「ギャ、ギャ」


2体か…まあ楽勝だろう。


「春樹」


「はい、樹姉さん、フィジカルブースト!」


フィジカルブーストの効果で俺の身体能力は再び上昇する。


「よし、いくかまずは…おりゃ!」


俺はさっそくシャベルをゴブリンの片方に投げつける。


―グギシャ


スキル鬼力にフィジカルブーストを掛けた俺のパワーでなげられたシャベルの直撃を受けたゴブリンの上半身は爆発四散した。壁に磔にするつもりだったがどうやら威力が高すぎたようだ。


「ぐ、ぐろい…」


春樹が顔を真っ青にして呟いた。そのうち慣れると思うよ。


さて、後一体の方は


俺は隣の仲間が爆散して呆然としているゴブリンの頭を安全靴で蹴り飛ばす。


―グシャ


「う、うえ」


その結果は前と同じようにゴブリンの頭部は果実のように吹き飛んだ。


「よし、一掃したな」


「…なんで樹姉さんは平気そうなんですか?」


「そりゃ、慣れたからね」


「慣れ、ですか」


「ああ、春樹、お前もすぐ慣れると思うから大丈夫だぜ」


「は、はい」


まあ慣れなかったらダンジョン探索者なんてできないし。


投擲したシャベルを回収し、俺たちはさらに先へ進む。


全てはレベル上げのために…








「…今度は3体か」


「なんか…ゴブリンばかりですね」


「俺はもうさすがに飽きてきたな」


ゴブリン3体が目の前でこちらを威嚇している。


まあ3体いようと遠距離攻撃手段も持ってない限り脅威ではない。


俺は春樹にフィジカルブーストを掛けてもらい、シャベルを構え、吶喊する。


「おらあああああああああ」


「グギャ!」


まずは一匹をシャベルで串刺しにする。


そのままシャベルを振り回して突き刺さっていたゴブリンを他2体のゴブリンに投げつける。


「「グギャ!」」


突き刺した一帯はすでに絶命していたようで黒い煙を上げ始めている。


俺は仲間を投げつけられ倒れているゴブリン2体に向かていく。


そして、ゴブリン一匹、一匹シャベルで心臓あたりを穿ち討ちとっていく。


そうしてゴブリン3体を倒すことに成功した


「ふう」


「ず、随分強引なやり方ですね…」


「まあ、しょうがない俺は魔法とか使えなしな、こうするしかない」


「魔法ですか…」


そういえば魔法って存在するのかな、存在していたらぜひとも使ってみたいものだ。


そんなこんなで俺たちはひたすらゴブリンを狩り続けた


結果として日が暮れる時間帯になるころには俺のレベルは9、春樹のレベルは6になっていた。


そろそろ帰ろうかな、と思っていた時


「ブヒ、ブヒ!」


そいつが、オークが現れた


見た目はでっぷり太った大柄な人間に豚の頭部を載せたみたいな感じだ。大きな棍棒を持っていて、何気に威圧感がある。ゴブリンよりは強そうだ。


春樹も一段と緊張した表情をしている。


「春樹!」


「は、はい、フィジカルブースト!」


よし体に力が湧いてきた、これでいける


俺はシャベルを構えて、床を足で全力で蹴り。加速し、オークに迫る。


「ブ、ブヒ!」


向かってくる俺に驚き棍棒を構えるオーク


俺はそのままオークの前まで来るとジャンプして、シャベルを上段から全力でオークに叩きつける。


オークはなんとか俺の攻撃に反応し棍棒を掲げて俺のシャベルを受け止める。


俺は瞬時に棍棒に食い込んだシャベルから手を放して地面に着地する。


そして全力で無防備なオークのどてっぱらに蹴りを叩き込む。


「ブヒイイイイ」


オークが情けない声を上げながら棍棒を取り落としたたらを踏む。


俺は落ちた棍棒から刺さったままのスコップを引っこ抜く。


「終わりだ豚野郎」


俺は再びジャンプすると未だ俺の蹴りのダメージに苦しんでいるオークの脳天めがけて全力でシャベルを叩き込む。俺が小柄すぎてジャンプしないと届かないんだよね…


―グシャ


そんな音とともにオークの顔面が半壊する。


それが致命傷だったようでオークは後ろへゆっくり倒れていった


オークの死骸が黒い煙をあげ君感に溶けていき、最後には紫色の小石と肉の塊が残った。


…肉の塊がなんで?。


しかも、なんか食べれるような気がする。なぜ


「…一応持って帰りますか?」


「…丁度、ビニール袋もあるし、食べるかはさておき、一応持って帰るか」


まあこの推定オーク肉の事はいい、それよりも


「春樹、とうとうレベル10になった」


「レベル10になったということは、樹姉さんが話していた変なおじさん?に話が聞けるのですね!」


そうなのだ。とうとう、あの変なおっさんに言われた目標を達成したのだから、ダンジョンについてさらに詳しい話が聞けるだろう。


「よし、じゃあ今日はもう帰るか」


「はい!」


そうして、俺たちは帰路に就いた。


…ところであの変なおっさんとはどうやって連絡を取ればいいのだろうか

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