第7話 突然の出来事
その後も一体、あるいはペアで出現するゴブリンをシャベルを駆使して狩り続けた
その結果
―経験値を獲得しました。レベルが5から6に上がりました―
レベル6にまで到達した。ここまで倒してきたゴブリンはおそらく数十体以上、うん、途中から数えるのが面倒になったので適当だ。
しかし、一日でレベル6まで上がるとは…レベル10って案外楽勝なのかね。
しかし、この人外じみた体も連戦に次ぐ連戦でさすがに疲れてきた。だってあいつら次から次へと襲ってくるんだもの。
取り敢えずもう今日は帰って寝よう。疲れているのになぜか全然腹が減ってないが。
俺は帰路につくことにした。
それから数十分かけて家の蔵まで帰ってきた。
「ふう、やっと着いたぜ」
そのまま、蔵を出て玄関に向かおうとして気が付く。
「そういや、俺、返り血まみれだったな」
といことで、庭にある洗い場で返り血をある程度落とすことにする。
レインコートは使い捨てでいいだろう。取り敢えずシャベルを綺麗にしよう。
俺は置いてあったたわしでシャベルの表面をこすってゴブリンの血を落とそうと試みる。
…なかなか落ちないな、これ
俺は無心でシャベルをたわしでこすっていた、それがいけなかった、何者かの接近に全く気が付かなかったのだ。
―バリ
何か木の枝を誰かが踏んだような音が聞こえた。我に返ってそちらを向くと。
そこには、小学校高学年くらいの男の子が驚愕の表情を浮かべてこちらを見ていた。
…えつ
え、誰なぜここに人がいるどういうこと?こんなド田舎でどこから?
俺が混乱していると、男の子が呟く。
「ち、血が…」
「あっ」
そして俺は気が付く、俺は今血まみれのレインコートを纏い、血まみれのシャベルを洗っている。
…完全に殺人犯のそれですね、はい
「あ、いや、これには深いわけが…」
俺が男の子に向かって何か言い訳をしようとすると
―バタン
男の子がその場でそのまま倒れた。
「え、お、おい」
俺はシャベルをほっぽり出して、慌てて男の子に近づく、よかった息はしている。
どうやら小学生には刺激が強すぎて気絶してしまったようだ。
「うーん、どうしようこの状況」
いや本当にどうしよう、というかこの子誰なの?
俺はその後取り敢えず、謎の男の子を家に運んで布団を敷いてそこに寝かせて、親父に電話をかけていた。
「ああ、昨日途中で通話が切れちゃからね、言いそびれていたんだよ。親戚の男の子をその家で預かることとなったんだよ」
「いやめちゃくちゃ重要なことじゃねぇか」
「突然通話が切れたし、忙しかったからね、それに本来はもっと後になる予定だったんだよ」
「なるほどなぁ」
「で、今その子はどうしているのかい?」
「…疲れていたんだろう、ぐっすり寝ているよ」
「そうか、そこはすごい田舎だからねぇ」
「全くだ」
「というわけでその子の世話は頼んだよ、樹ちゃん」
「ちゃん付けするなし、というか俺が世話するのか」
「ああ、頼んだよ」
その後親父といくつか話をした後、電話を切る。
「う、うーん」
と、寝ていた男の子、名前は小山春樹らしい、が目を覚ました。
さあここからが正念場だ
僕は小山春樹、小学5年生だ。今は田舎の山道を歩いている。新しくお世話になる家へと向かっているからだ。
こうなった事情は…父さんが失踪したからだ。
僕の母さんは僕がまだ小さいころに家を出て行ってどこかへ行ってしまったらしい。それからずっと父さんと二人暮らしだ。しかし父さんは仕事で忙しく、ほとんど家にいなかった。だから僕はいつも一人で家で過ごしていた。友達と遊ぶこともあったけど大体は一人で過ごしていた。正直寂しかったけど数年も過ごしていると、いやでも慣れてしまった。
そんなある日、父さんが血だらけで帰ってきた。僕が目を丸くしてびっくりしていると
「春樹、父さんな、新しい仕事を見つけたんだ、ダンジョン探索者って言ってな」
全身血だらけで、どうやら返り血らしいが、その姿で父さんはうれしそうに言う
曰く、ダンジョンという物があり、そこを探索することでたくさんの財宝が手に入るらしい。
さらにレベルという物があり上げれば上げるほどたくさんの恩恵を受けるらしい。
僕には正直よくわからなかったけど、血だらけで嬉しそうに話す父さんは少し不気味だったけど。
それから生活は一変した、父さんはいつも早めに帰ってくるようになった。しかもダンジョン探索者というのは稼げるらしく、よく外食で父さんと一緒においしい物をいっぱい食べた。なにより父さんと一緒に入れることが何よりもうれしかった。
しかし…そんな幸せな日々はある日突然を終わりを迎えた。
父さんが夜遅くになっても帰ってこなかった。その次の日も帰ってこなかった。
そして、その次の日、父さんの代わりに変なおじさんが訪ねてきた。そしてその変なおじさんは
「春樹くんだったか、君の父さんは…ダンジョンで行方不明となった」
と言った。
…え、それはどういう
「僕は君の父さんに、もしものことがあったらと、頼まれていたものだ」
…父さんは、父さんは
「すまない、こんなこと言いたくないが、恐らく…生存は絶望的だ」
変なおじさんは苦しそうな顔で言う。
…そんな
それからのことはほとんど記憶が残っていない。変なおじさんに連れられ、色々なところで手続きをした。そしてそのうち僕はとある親戚の家にお世話になることが決まっていた。
そして今に至る、未だに父さんがいなくなっちゃことを受け止め切れていない
そうやって田舎道を歩いて目的の家についた、変なおじさんとは駅で別れている。
家の門は開いていた僕は現実感が未だにわかないまま門をくぐる
家の庭の方から、何やら水の音がする。ふらふらとそちらへ向かう。
そして庭に入り、何やら洗いものをしている人影を見つける。
その人影は小柄な女性と思われるが、なぜか赤黒く染まったレインコートをきて血だらけと思われるシャベルを洗っていた。
…え
そこで僕に現実感が徐々に戻ってくる。突然の出来事に思わず後ずさる。と木の枝を踏んでしまい音が鳴る。
と、その音に気が付いた女性がこちらを向く。
まるで、天使のように整った顔立ちをした中学生くらいのお姉さんだった。僕は一瞬、見惚れていた、だがその直後現実を思い出す。
「ち、血が…」
「あっ」
そう全身血まみれなのだ、まるであの時の父さんのように
「あ、いや、これには深いわけが…」
お姉さんがなにやら言っているが、それどころでなかった。逃避していた現実が一気に襲い掛かってきた。
そして僕の意識はそれに耐えられず闇に沈んだ。
「…ここは」
気が付いたらまっ白な空間にいた。確か僕は押し寄せる現実に耐えられず気を失ってしまったはずだ。
しかし今はなぜか落ち着いている。ここは夢の中だろうか。それにしては現実味ありすぎるような気がする。明晰夢という奴だろうか
「にゃー」
と、僕の目の前にいつの間にか三毛猫がいた。
「な、なんだ」
僕が困惑していると
「にゃー」
もう一度鳴いた三毛猫から光があふれ、その光が僕を包み込む。
―ファーストギフトを獲得、スキル「エンチャント」を取得―
「え」
ファーストギフト?エンチャント?なんのこと
「にゃー」
三毛猫がもう一度鳴いた。
そしたら僕の中に知識が流れ込んできた。
ダンジョンとはなんなのか、僕は僅かばかりではあるが理解できた。
…なるほど、父さんが命を懸けて潜っていたわけである。
「にゃー」
三毛猫が三度そう鳴くと僕の意識が薄れていく。
「う、うーん」
そして僕は現実で目を覚ます。なぜかさっきのはただの夢ではないと理解していた。
「起きたか、大丈夫か?」
僕は布団に寝かされていて、横に座っていたあのお姉さんが心配そうな、緊張したような顔で問いかけてくる。
「はい、大丈夫です」
「そ、そうか」
お姉さんは安心した表情を浮かべる
「あ、あのな、さっきのは…」
お姉さんがなにか言いかけたが無視して僕は問う。
「お姉さんは…ダンジョン探索者なんですか?」
彼女はその大きな目をさらに大きく見開いて、驚愕の表情を浮かべた。
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