第4話 日本刀?

―もし、覚悟があるなら、非日常を送る覚悟があるなら…明日の、今あたりの時間、ここに来るといい―


―ああ、これはしっかり一晩考えた方がいい…そして個人的にはなかったことにするのがおすすめだ―


ダンジョンの階段をのぼりながら、先ほどの変なおっさんの言葉を思い出す。


「…非日常、か」


なんて、考えながら階段を上っていたら蔵についていた。


「にゃー」


腕に抱えている三毛猫が鳴いた。


外へ出てみると時刻は昼を過ぎたあたり。


取り敢えず、飯でも食うか。


縁側でサンダルを脱いで縁側から家に入り台所についてところで、違和感に気が付く


なんか、体が軽い。


試しにその場で全力でジャンプしてみる


―ドスッ


「ぐぇ」


ジャンプしたと思ったら天井に頭ぶつけていた


いってー…くない?あれ物凄い勢いで天井に頭をぶつけたのにそんなに痛みがない


…なにかが俺の体に起こっている…まあ、すでに女になるという異常が起こっているけど。


取り敢えず、飯の支度でもしよう。








「なぁ親父、蔵になんか変な物があるって、管理していた人に聞いてないか」


俺は飯を食ったあと、親父に電話をしていた。


「いや、聞いてないね…なんかあったのかい」


「ああ、ないならないでいい。ちょっと気になっていたことがあっただけだ。大したことじゃない」


「そうかい?そういえば重要なことを言い忘れていた、そのうち、その家に親戚の…」


ブチッ


「ん?」


親父が何かを言っている途中で通話が切れる。なんだ?


スマホを見ると電源切れていた、なんと間が悪い。


まあ、後で聞けばいいだろう。


しかし…


「ふむ、親父も知らないとなると…やはり、あのダンジョンとやらは突然あらわれたのか?」


親父も知らないとなると、その可能性は高い。でも…


「そんな現象あるか?」


明らかに異常事態だ、警察に行くか?いや面倒くさい。


それに俺自身に突然女になるという異常事態が起こっている。


…もしかしてダンジョンと俺が女になったの、なにか関連性があるのか?


まぁ、いいそれは明日、あの変なおっさんに聞けばいい。そう、俺はすでに明日、約束の場所にいく覚悟をしている。


色々と脅されたが、覚悟は決まっている。


なぜかって?それは女になるという異常事態が既におこっているから。しかも身体能力が、軽く確認しただけで人間離れしていることが分かった。


今更、まともな人生を送れるとは思っていない。


しかも、もしかするとあのダンジョンとやらに、男に戻る方法があるかもしれない。俺はそれに賭けることにしたのだ。


そしてなにより重要なのが…暇だからだ。田舎過ぎてやることなくて暇で、暇で、もう死にそうだ。


ダンジョンなんてなんか字面だけでわくわくするだろ!俺は今、好奇心真っ盛りの中学二年生なのだ。


一体何が出てくるのか、俺の心は先ほどのゴブリンとの戦いすら記憶のかなたに、わくわくしていた。


まあ、そんなことを言っても今日、今現在やることがないのが真実なのだが。


テレビをつけ、ちょっと見ていたが早々に飽きてスマホをいじり始める。


そんなこんなとしていたらすっかり夕方だ。


そして驚くべきことがある。なんと腹が全く減っていないのだ。この体はこんなにも小食でどうやってあの身体能力を実現しているのだろうか。


まあ、いい。些か早いが風呂入って、歯を磨いてさっさと寝ちまうか。


俺は立ち上がってスマホをちゃぶ台に置き、脱衣所に向かう。


服を脱いでいた時、あることに気が付いた。


「ん?なんだ、このシミ」


服に赤黒のシミが細かく、たくさんついていたのだ。


「うーん…まさか!」


恐らくこのシミ、あのゴブリンとやらの返り血?だ。


「うぇ、気持ちわるい」


これは、洗濯で落ちるのだろうか、心配だ、


「明日行くときまでに何か対策を考えとかなきゃ」


脱いだ衣服を洗濯機に放り込み俺は風呂へ向かった










翌日


「ふぁあああ、よく寝た…てっ、やべ寝すぎた」


どうやら昨日の出来事は自分を予想以上に疲弊させていたようだ。


「まずい、おっさんとの約束が」


急いで、女物のパジャマを脱ぎ、女物の服に着替える。


…ほんと、女物の衣類しかねぇな、泣きたくなってくるぜ…


とはいえまさか真っ裸で行くわけにはいかないしな。


さっさと準備を終えた俺は蔵に…と、おっとこれを忘れるところだった。


俺はレインコートを羽織る、これが昨日考えた返り血対策だ。


返り血対策ってなんか犯罪者になった気分だな…


まぁいいさっさと向かおう。


そうして準備を整えた俺はシャベルを持って、ダンジョンの入り口がある蔵へと向かった。












蔵の中に入ってダンジョンに向かおうとして、蔵の奥に置いてあったある物に目を止め俺は足を止めた。


あれは


「あれは…日本刀、か?」


置いてある物に近づく、それは鞘に入った日本刀だった


「日本刀だな…本物か?」


俺は置いてあった日本刀を手に取る。刀についての知識はないが、本物だったら今持っているシャベルより余程に武器として役に立つのではないかと考えたからだ。


恐る恐る刀身を鞘から抜いてみる。


「何だ、これ「三笠」?」


錆一つない綺麗な刀身には「三笠」と彫られていた。この日本刀の名前か?


と、その時


―呪神武器に呪われました。―


突然俺の脳内に昨日のゴブリンを倒した時にした声がした


「!?なにが」


俺が突然の声に驚いていると、ふと日本刀を持っていた腕が軽くなるのを感じた。


「えっ、」


慌てて意識を手の日本刀に戻すと、手に持っていた日本刀が消失していた。


あ、あれ確かにさっきまであの三笠と彫られた日本刀を持っていたはずなのに


それに例の声が、なんとか武器に呪われたって



もう、いい余計なことを考えずにあの変なおっさんにすべて聞いてしまおう。はぁ


俺はため息をついてダンジョンの入り口へと向かった


ダンジョンのそこそこ長い階段を下り終わって、昨日ゴブリンと戦った空間に出た。


そこには昨日の変なおっさん…ではなく昨日のゴブリンと同類と思われるものがいた。


…はぁ


「ギャ、ギャ!」


昨日と同じようにこちらを見つけたゴブリンが醜悪な笑みを浮かべこちらにとびかかってくる。


俺は突っ込んでくるゴブリンに対しシャベルを片手で適当に横薙ぎに振る。


―グシャ!


「ガギャ!」


俺の横薙ぎに振ったシャベルがゴブリンに直撃し、ゴブリンが悲鳴を上げながら吹っ飛んでいく。


吹っ飛んでいったゴブリンは壁に直撃して地面に落ち動かなくなった。そして黒い煙を上げながら消えていく。


…なんか、色々ありすぎて、昨日はあんなにビビっていたのに、今日は特に何も思わずぶっ殺してしまったな、これが慣れってやつかぁ


俺は消えていくゴブリンの死骸を見ながら、ぼーと考えていると


「ほう、昨日の今日で、随分な変わりようだな、嬢ちゃん」


いつのまにか現れていた昨日の変なおっさんが言った。


「ああ、慣れた」


「慣れたって…僕なんか慣れるまで結構かかったのに…まぁいい、それにここに来たってことは?」


おっさんが問うてくる。返答はもちろん。


「ああ、覚悟はすでに決まった、ダンジョンについて、教えてくれ」


そう答えた。


「…おすすめはしないけど…まあここまで来たら教えるよ、僕が何者か、ダンジョンとは一体何なのか、をね」


おっさんは不敵な笑みを浮かべてそう言った。


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