洞穴 5
「あれ?おばあちゃん?」
「どうしたのかしら?入れないんだけど」
ぼくは穴の外に出て、おばあちゃんを先に行かせようとした。
でも入れなくて。
手をつないで入ろうとしても、おばあちゃんの体の一部が入ろうとすると外に出ているぼくの手も入れなかった。
「もしかしたら“結界”なのかもしれないわね。私はここで待っているから、
「わかった」
なんで、おばあちゃんだけ入れないんだろう?そう思いながらみんなのあとを追った。
懐中電灯は持ってなかったけれど(さっき蓮が持っていったからね)トンネルの中はぼんやりと明るくて歩くのには困らなかった。
進むにつれて向こう側の光がだんだん大きくなり、突然ぱっと明るくなった。
「まぶしっ!」一瞬、目をつぶってそろそろとあけると、みんなが立ってきょろきょろと周りを見回していた。
「どうしたの?」
「あ、
「なんか、入口の所から入ってこれないって。きっとここは結界だろうから外で待ってるって」
「そうなんだ……結界。さもありなんって感じだよ。ここ」
言われてぼくも周りを見回した。
「ここって……」
そこはトンネルを抜けた先の外ではなかった。
周囲にはごつごつした岩の壁がある。
ぼくたちが通ってきた道以外には、道はない。
「ここって、まだ洞穴の中?」
「そうみたい。あそこが外へ続いてはいるみたいだけど」
そういって隆之介が上を見上げた。
見上げた先には、空が見えた。
「あそこから光が入るからトンネルの中も、うす明るかったんだろうね」
「こんなとこ、初めてだな。岩の洞穴ってかっこいいな」
入るのためらってたのも忘れて、智生が興奮している。
「なんだか、隠れ家?秘密基地って感じがするよな」蓮も楽しそうだ。
「ところで」コホンとひとつ咳払いをして隆之介が言った。
「ここに来た目的、忘れてない?」
あ、そうだ。
ぼくも忘れるところだった。
ぼくはポケットから玉を取り出して話しかけた。
「天狗さん。今日は洞穴?洞窟?みたいなところに来ているんだけど。ここには天狗さんの分身って、ありそう?」
【ここか?】
天狗さんは、いつものとおり周囲を探っているようだった。
【む!ここは!】
「?どうしたの?」
【わしは、ここにあるようじゃが。それより、ここは!!】
「どうしたの?ここって、天狗さんが知っている場所なの?」
【ここは、わしの。わしが……】
天狗さんが何か言おうとしたとき、声が聞こえた。
≪ようやくたどりついたか≫
続
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