洞穴 4
ぼくは呼吸をととのえながら水筒の水を飲んだ。
目の前には大きな岩壁があって、すみのほうに入口みたいな穴があいている。
「あそこが入口かな?」横に立っていた
「たぶん、そうだと思う」
「ふたりとも、もう大丈夫?」
「うん、大丈夫」
「おれも」
「おばあさまは?」
「わたしもなんとか。さすがにみんなみたいには上れなかったけどね」
そう言うおばあちゃんも、ぼくたちにほとんど遅れずに上ってきたのにはちょっとびっくりしちゃった。
「まあ、明日か……明後日にはきっと筋肉痛でしょうけどね」
「じゃあ、みんなそろったところで。しゅっぱぁ~っつ!」
「ちょっと待って」隆之介が智生を止めた。
「なんだよ?」
「中。真っ暗かもしれないでしょ。だから、これ」
そう言って小型の懐中電灯を手渡した。
「あ、そっか。サンキュ」
その場でスイッチをいれると、青白い光がついた。
「お~!これ、明るいやつ!」
「あら、隆之介くんも持ってきてたの。ありがとう。じゃあ、私が持ってきたのは
「ありがとう」
おばあちゃんから受け取った懐中電灯をつけてみた。
ちゃんと青白い光がついた。
「もしも真っ暗でも、懐中電灯が二つあると安心だね」
「そうね」
穴の前では智生がおそるおそる中をのぞきこんでいた。
「どうしたの?」
「いや、なんとなく緊張しちゃってさ」
「そんなこといってないで、サクッと中を照らしてみればいいだろ。悠斗、それ貸して」
蓮はそう言ってぼくの手から懐中電灯を取ってスイッチを入れ、入口から中を照らした。
「あ、ひでぇ」
「あ、ひでぇじゃないだろ?目的は中に入ることじゃないのか?」
「それはそうだけど、なんとなく初めて入るわくわく感って長びかせたくないか?」
「おれは、早く目的を達成する方が大事だよ。智生は“リーダー”なんだろう?」
「……わかったよ。じゃあ、入るぞ」
「入る前に」隆之介が言った。
「中って、どんな感じになってるの?」
入口があまり広くないから、蓮と智生の体で中が見えない。
「えーっと、地面はここと一緒で土かな。壁は岩みたいで、ゴツゴツしてる。せまくてトンネルみたいな感じで……あれ?」
「どうしたの?蓮」
「気のせいかな?ちょっと灯り消すぞ。……見間違いじゃない。向こうの方が明るくなってるから、出口があるみたいだぞ、
「じゃあ、ここは洞穴じゃなくトンネルってことなのかな?」
「どこかに抜けられるんだったら安心だな。じゃあ、出発!」
「……ねえ、隆。もしかして行き止まりかもって心配してたのかな?智生」
「そうみたいだね」
先頭の智生に続いて蓮、隆之介が入って行った。
そしてぼくが入った後におばあちゃんが入って……来れなかった。
続
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