洞穴

 しばらく待つと、おばあちゃんが戻ってきた。

「明日も、明後日も車を使う予定はないらしいわ。どっちでも好きな日に使っていいんですって」

「ほんと!じゃあ、みんなに聞いてくるから、ちょっと待ってて」

ぼくは隆之介りゅうのすけたちを探して棚の間を見て回った。

(あ、いた)

児童書のコーナーの机で智生ともきがページをめくっていた。

「(あ、本決まったの?)」

「(うーん。隆之介に選んでもらったんだけど、なかなか読むの大変でさ)」

「(そう?その本、ぼくも読んだことあるけど面白かったよ?)」

「(そうかあ?漫画だったらサクサク読めるんだけどな……あ~あ、漫画で感想文書いちゃだめなのかな)」

 

 「(さすがにそれは、だめだと思うけど。あ、ねえ、みんなはどこ?)」

「(たぶん、あっちの本棚だと思う)」

「(じゃあ、ちょっと呼んでくる。そこでおばあちゃんに会ったんだ)」

隆之介たちはミステリーのコーナーにいた。

「(りゅうれんも、ちょっといい?)」

「(どうしたの?)」

「(さっき、おばあちゃんとばったり会ったんだ。だから今すぐでも日にち決められる)」

「(わかった)」

3人で智生のところに戻ると、まだ読み続けているようだった。

「(智生、まだ読みおわらないの?)」

「(そんなこと言っても、難しすぎるよ、隆)」

「(そんなんじゃ、智生だけ留守番だな)」

「(なんで留守番なんだよ?蓮)」

「(さっき悠斗がばったりおばあさんに会ったんだって。だから、今すぐでも行く日にちが決められるけど……宿題が途中の智生は連れて行かれないなっていう話)」

「ええ!そんな、ひで……」

「(シ───ッ!)」

「(わかったよ。急いで読むから!今日中に絶対読むから。でもって明日書くから)」

「(明日中に、絶対だよ?)」

「(約束する!)」

「(……そういうことだから、決行は明後日だね。時間と場所はいつもどおりで)」

 

 ぼくはおばあちゃんのところに戻った。

「おばあちゃん、あのね智生の宿題が明日までかかりそうなんだ。だから行くのは明後日でお願いしたいんだけど、いい?」

「いいわよ。なあに?智生くん宿題終わってないの?」

「感想文がまだなんだって。いま隆之介がサボらないように見張ってるとこ」

「隆之介くんも大変ね。ところで時間と場所はいつもどおりでいいの?」

「うん」

「わかったわ。私はこれで帰るから、みんなによろしくね。あ、明日もうちに来るんでしょう?」

「うん。ばいばい。おばあちゃんありがとう」

バイバイと手を振りながら、おばあちゃんは図書館を出て行った。

では“みやさんチェック”入らないんだ。

みんなのところに戻ると、智生がものすごく真剣な顔をして本を読んでいた。

「(ねえ、隆。もしかして『あの場面』に入ったのかな?)」

「(多分そうだと思うよ)」

あの本、『あの場面』に入ってからすっごく面白くなるんだよね。

きっと読み終わるのも早いかもしれない。

 



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