リベンジ 4

 「……ないねえ」

「そうねえ」

ぼくたちは駐車した場所から先にむかって5分くらい歩いてみたけれど、道らしいものは見つけられなかった。

悠斗はると、悪いんだけど、しばらくひとりで探してもらえる?」

「いいけど、どうしたの?」

「車を取ってきて、先の方まで行ってUターンして戻ってくるわ。そうしたら帰りも楽でしょう?」

「そっか。わかった」

「じゃあ、よろしくね」

そう言っておばあちゃんは車の方に戻っていった。

しばらくするとエンジン音が近づいてきた。

ぼくの横で減速した車の中でおばあちゃんは(バイバイ)と手を振り、前方へと走っていった。

「暑いなあ……」歩きながら水筒の水を飲む。

 

 「おや、こんな暑い中を散歩かい?」

とつぜん男の人の声がした。

「えっ?」

びっくりして見回すと、道路わきの畑の中に知らないおじさんが立っていた。

「あ、こんにちは。えっと、散歩じゃなくて道を探してるんです」

「道?どこに行く道なんだい?」

「あの、えっと、この山の中にトンネルか洞窟みたいなものがあるらしくって。そこに行きたくて道を探してたんです」

「トンネルか洞窟?。……ああ!そういえばあったな。あんなところに何か用事があるのかい?」

「いえ、用事っていうか。あの、ぼく、洞窟とかそういうものが好きで。だから夏休みの間に行ってみたいなって」

ぼくってやっぱり、うそつくの下手かも。

「ほう、最近の子どもにしては見どころがあるな」

「え?」

「最近の子どもはゲームだスマホだと家の中にこもってばかりだからな。俺の孫たちもヒマさえあるとゲームばかりだ。ふうん、あそこに行ってみたいなんて話、久しぶりに聞いたな」

「久しぶりって、誰か聞いてきた人がいたんですか?」

「いやいや、そんな奴はいない。俺らが子供のころに友人同士で教えあって以来だってことだよ」

 

 「あの、ぼくも友達と行こうって思ってるんです。でも、どんなとこかわからないから下見しようって、おばあちゃんが」

「へえ、ばあさんが一緒なのか」

「はい。今、向こうの方に車で行ってて、こっちに戻りながら道を探してくれてるんです」

「なかなかフットワークが軽いばあさんのようだな」

「はい。いつもぼくに色々教えてくれます。って、おじさん、そこへの行き道知ってるんですか?」

「もちろん。ガキの頃さんざん遊んだ場所だからな。ほら、この道をもう少し行ったところに杉の木がたっているだろう、あそこが入口だ。道はほんとに狭いから

車だと気づかないだろうな。入口で戻ってくるのを待っててやれ」

「あ!ありがとうございます」

「ああ、それと。一本道だから迷う心配はないが、山道だから歩くのは大変だぞ」

「ありがとうございます!」

ぼくはお礼を言って、おじさんが教えてくれた場所をめがけて歩き出した。

 

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