あと、ひとつ 6

 「歩くって、どれくらい?」

「20分ぐらいかしらね、ナビアプリだと」

「上り坂をのぼるんだよね?20分……」

「のぼらないと行かれないわよ。行った先には水もわいているし、山の中だから、ここよりは涼しいと思うわ。それに」

「それに?」

「行きが下りで帰りが上りよりは、ずっといいでしょう?」

「それは、そうなんだけど」

「とにかく、あとでお友達に会う時にこの地図を持って行きなさい」

「はぁい。あ、そういえばおば……みやさんって、昔、学校の先生だったの?」

「ずっと昔ね。まだ真智まちが小学生だったころ。それが、どうかしたの?」

「ううん。この前隆之介りゅうのすけ智生ともきのおかあさんが教わってたって聞いたから。なんで、先生やめちゃったの?」

「続けててもよかったんだけど、他にもやりたいことが色々出てきちゃったからね。でも、今でも先生をしようと思えばできるわよ」

「わあ!じゃあ、先生やってよ。ぼく、おばあちゃんに習ってみたい」

「先生になってもいいけど、厳しいわよ」

「え~!」

 

 おばあちゃんの家でお昼ごはんを食べてから、隆之介の家に行った。

れんと智生はもう着いていた。

「ごめんね、遅れちゃった」

「ううん、大丈夫。ふたりともついさっき来たとこだったし」

「よかった」

「じゃあ、さっそく……と言いたいところだけど。ごめん、昨日から探してみたんだけど見つからなかったんだ。公園がなかなかヒットしなくってさ」

「それなら、おばあちゃんが見つけてくれてたよ」

そういって、おばあちゃんが持たせてくれた地図を2枚とも取りだして、目の前のテーブルに置いた。

そして、おばあちゃんに聞いたとおりの説明を3人に聞いてもらった。

「自然公園……そうか。名前に『公園』って入ってない可能性は考えてなかった」そう言うと隆之介はPCパソコンを操作しだした。

数分後『ここか』と言って、ぼくたちの方に画面を向けてくれた。

 

 「そこも、結構有名な場所みたい。ブログとか紹介している記事もいっぱいあるし。ただ、悠斗のおばあちゃんが言うように、ちょっと不便だからあまりたくさんの人は行かないみたいだね」

「知る人ぞ知るってやつか?」蓮が言った。

「そこまではないだろうけれど、この前のところよりは少ないと思うよ」

「この前って……ああ!拓也が閉じ込められたあそこか!」智生が言った。

「そうそう!」

ぼくたちはあの時の、拓也が慌てふためく姿を思い出して大笑いした。

ひとしきり笑った後、隆之介が言った。

「じゃあ、今度はここに行くとして。悠斗のおばあちゃんに甘えちゃって、ほんとにいいの?」

「うん。いいよ。使ってないパパの車を借りようって、おばあちゃんが言い出したんだもの」

「じゃあ、甘えさせてもらう。智生と蓮は、それぞれ家の人に了解取るのを忘れないようにね」

「もちろん……でも、今度はどうする?わき水くみにって言うのか?」蓮が言った。

 

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