あと、ひとつ 5

 翌日は、起きてごはんを食べてすぐにおばあちゃんの家に行った。

だって、少しでも早くおばあちゃんが見つけた場所を知りたかったから。

「おばあちゃん!どこ?どこにあるの?」

「来る早々、騒がしいわね。早い時間からくるだろうとは予想してたけど、思ったとおり。起きてすぐ来たんでしょう?」

「もちろんだよ。だって、早く知りたいんだもん」

「まあ、いいわ。こちらにいらっしゃい」

おばあちゃんの後についてリビングに入る。

ソファのまえのテーブルには大きめのと小さめの、それぞれ一枚ずつの地図が置いてあった。

「こっちの大きい地図が市内の地図ね。このあたりがウチで」そう言いながらおばあちゃんは地図の一点を指した。

「そして、目的地はここ」そう言って指した部分には赤ペンで丸が書いてあった。

 

 「ここって……すごく遠いんじゃない?」

「そこそこ遠いわね。車で40分くらいじゃないかしら」

「えーっ!そんなに遠いの?」

「そうなのよね。それと、こっちを見てくれる?」そう言って小さい地図を出してきた。

その地図にも、一箇所に丸が書いてある。

「ここが目的地だけど、聞いていたとおりそばに駐車場がないのよ。クチコミで見てみると、小型の車だったらそばまで行けるけれど大きい車だと難しいって書いてあったわ」

「じゃあ、おばあちゃんの車だったら行けるんだね」

「……だれに留守番させるつもりなのかな?」

「あっ!」そうだった。

おばあちゃんの車は4人乗りで、でもぼくたちは5人で。

「……誰にも留守番させたくない。あ!バスは?この前みたいに」

「バスも、あることはあるんだけど、すごく本数が少ないのよ。だから考えたんだけど。悠斗はるとのお父さんの車、貸してもらうことはできないかしら?」

 

 「パパの?たぶん大丈夫だと思うけど」

パパは今単身赴任中だから、車は使ってない。

ずっと乗らないのは車に悪いからと、時々ママが乗るくらいだ。

「でも、パパの車って普通車だよ?おばあちゃん運転できるの?」

「当たり前でしょう。いまでこそ軽自動車だけど、昔は普通車に乗っていたのよ」

「そうなんだ」

ぼくが知ってるおばあちゃんはずっと軽自動車に乗ってたから、それにしか乗れないんだと思っていた。

「じゃあ、真智まちには私から頼むわ」

「うん」

ふと、あることに気がついた。

「でも、おばあちゃん。さっき言ってたよね?大きい車だと近くまで行くのは難しいって」

「近くまではね。だから、ここ」そういって小さい方の地図の1点を指した。

「ここに、駐車場があるのよ。この奥が広場になってて、自然公園みたいになっているらしいわ。公園って、ここのことだったのね。駐車場は無料だし、ここに停めて歩いて行こうと思うのだけど」

 

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