あと、ひとつ 4

 「え?わかったの?おばあちゃん」

「ええ、なんとかね」

「どこどこ?どこにあるの?ぼくたちでも行ける?」

「そうせっつかないの。明日は悠斗はるとはうちに来るんでしょう?」

「うん。昼から隆之介りゅうのすけの家に行くけどね」

「じゃあ、地図とか準備してあげるから、それを持っていくといいわ」

「えー?どこにあるかくらい、今教えてくれてもいいのに」

「悠斗はうちの市の地図、頭の中に描ける?」

「……描けない」

「部屋にも地図はないでしょう?だったら明日、その目で地図を見たらいいわ」

「わかった。ありがとう、おばあちゃん」

「み・や・さ・ん」

「……ありがとう、みやさん」

おばあちゃんとの電話を終わらせたぼくは、スマホを返しにキッチンに行った。

 

 「おばあちゃんからの電話、何だったの?」

「んとね、夏休みの宿題で調べてもわからないことがあったの。教えてって言っても教えてくれなくて。そのかわり、調べるための資料を見つけてあげたわよって」

「そんなことだったら、わざわざ電話かけなおさせなくても。私に伝言頼めば済むような用事じゃない」

「うん。そうかも」

ほんとのことは、言えないもんな。

でも“宿題”なのはうそじゃないし……おばあちゃんに言わせると『うそではないのよ、方便です』だって。

「ところで、今日の夕ごはんはなあに?」

「ごめんね、悠斗。ママ今日すごく忙しくて買い物に行けてないのよ。だから勝手どんぶりなの」

「ううん。全然かまわないよ。最近食べてなかったから、そろそろ食べたいなって思ってたんだ。ぼくがお手伝いすることある?」

「今日は、特にないわ」

「じゃあ、部屋で本読んでるね」

 

 部屋に戻ったぼくは、玉を取り出して天狗さんに話しかけた。

「さっきおばあちゃんからの電話で、もうひとつの水くみ場の場所がわかったんだって」

【そのようじゃの】

「明日、おばあちゃんの家で地図を見せてもらうんだけど。どこにあるんだろう?なんだかドキドキしてきた」

【なぜじゃ?】

「だって、天狗さんの右手があるかもしれないでしょ?だからだよ」

【ぬしの手では、なかろうに】

「うん。でも、なんだかぼくが失くしたものがみつかるような、そんな気分になるんだ」

【そういうものかの】

「悠斗ー。ごはんよ」

「あ、ママが呼んでるから行ってくるね」

【うむ】

キッチンのテーブルには、きざんだお漬物、ミックスベジタブル入り炒り卵、ミートボール、ツナ、ちぎったレタスが並んでいた。

それと、ケチャップとマヨネーズ。

茶碗に食べたい量のごはんをよそって、好きな具材を好きな量のせて丼にするんだ。

昔、ママが熱を出したときに、料理ができないパパがぼくのために考えてくれたメニュー。

冷蔵庫の残り物とか缶詰とか、あるものだけで作る丼。

「明日はちゃんと買い物に行って、おいしいもの作るわね」

 

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