あと、ひとつ 3

 「そ、そうだったんだ」

「でも、本質は間違えてないでしょ?なテーマでしたことをまとめたんだもの」

「お、おう」れんもさすがに面食らったようだ。

「子どもらしい研究と言われてもね、思いつかないんだ」

たしかに植物や虫の観察とか工作とか、ぼくたちが思いつくことは隆之介ないけれどね。

「じゃあ、今年は?」

「だから、図書館でいい案が載ってる本がないか探すつもりなんだ」

「じゃあ、おれと悠斗はるとでそれが『子どもらしい』かどうか、判断してやるよ」

「ありがとう。でも、その前に自分の本を探すのは忘れないでよ?」

「お、おう」

「うん。わかった」

「じゃあ、行こうか。あ、お節介かもしれないけど、ついでに智生ともきの分も探してあげよう?」

「オッケー」

 

 図書館行きは、大正解だった。

涼しいのはもちろんのこと、みんなそれぞれお目当ての本を探すことができたから。

隆之介が図書館のPCパソコンで検索した本のタイトルを“本の場所を調べる専用”の機械で在庫確認して、本があったら実物を確認する。

こういうと面倒なようだけど、ものすごくたくさんの本の中から選ぶわけだから、本棚だけを見ているよりもずっと効率的だった。

選んだ本をテーブル席で読みながら隆之介に小声で話しかけた。

「(ねえ、隆之介)」

「(なに?)」

「(ここのPCで、水くみ場のこと探さないの?)」

「(こういう、公共の場所では探したくないんだ)」

「(なんで?)」

「(履歴とか、残るのいやなんだ。消し方はわかるけど、念のため)」

「(ふうん)」

小声で話してたつもりだったけど、向い側の席に座ってたおじさんにじろっとにらまれてしまった。

すみませんと頭を下げる。

「(ぼく、この本借りてくるね)」

「(あ、じゃあぼくも。蓮はどうする?)」

「(おれも、これに決めた。智生のぶんはどうする?)」

「(ぼくが代わりに借りておくよ)」隆之介が言って、蓮から本を受け取った。

 

 「明日は、どうする?」図書館を出たところで、蓮が聞いてきた。

「そうだね。明日もぼくの家にしようか?もし、場所がわかってたらそのまま打合せできるし」

「じゃあ、智生を誘ってからりゅうの家に行くよ」

「了解」

ふたりと別れて家に帰りついたぼくを、キッチンから顔を出したママが手招きして呼んだ。

「悠斗、おばあちゃんから電話がかかってたからかけなおしてあげて」

「わかった。あ、ぼくの部屋で話してもいい?」

「いいわよ」

おばあちゃんからの電話だったら、天狗さんがらみの可能性が高い。

ママのスマホを借りたぼくは部屋に入るとしっかりとドアを閉め、おばあちゃんに電話をかけた。

「もしもし。悠斗だけど、どうしたの?」

「あ、悠斗?わかったわよ、例のアレ」

 

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