あと、ひとつ 2

 そうだった。

今度もみんなで行きたい。

「とりあえず遅くなるから、もう帰りましょう。今日は真智まちは家にいる日でしょう?帰ってお手伝いしなさい。隆之介りゅうのすけくんもごめんなさいね」

「いえ、大丈夫です。じゃあね、悠斗はると

「うん、ばいばい。また明日ね」

家に帰ったぼくは夕ごはん作りの手伝いをした後、食べながらママに今日入った水風呂とわき水の話をした。

話題としては、そのあとの拓也たくやがおしおきを受けた話のほうがおもしろかったけれど“ないしょ”だから言わないようにするのがちょっと大変だった。

「そんなにおいしいお水だったのね。知ってたらペットボトルにくんできてもらえばよかったわ」

「おばあちゃんも帰りがけに言ってた。『今日は悠斗たちのつきそいでバスだったから、ペットボトルを持ってくるの諦めたのよ』って。荷物になって重いからだって」

「ほんとは忘れただけでしょ。まったく、おばあちゃんったら」

 

 翌日、いつもの公園に行った。

今日は智生ともきが家の用事で来られないらしい。

「昨日は楽しかったな」れんが言った。

「家に帰ってかあちゃんに話したらさ、『そんなにおいしいお水だったら、ペットボトルにくんできてもらえばよかった』って言われたよ」

「あ、ぼくもママにいわれた」

「ぼくも、かあさんに言われた」

「みんな地元なのに、なかなか行ってないんだな」

「地元だからかもしれないね。いつでも行けるという安心感」

ほんと、そんなものかもしれない。

「そういえば昨日蓮たちが帰った後に悠斗のおばあちゃんが言ってたんだけど。山のほうにも水を汲める場所があるらしいんだ」

「へえ。悠斗のおばあちゃん、誰からか聞いたのか?」

「昨日の場所に水をくみに来ていた市外の人なんだって。な、悠斗」

「うん。おばあちゃんも場所がよくわからないんだって。その人に大体の場所は聞いたけど地名がわからないから探しにくいかもって。たぶん今日はPCパソコンでいろいろ探してると思う」

 

 「このあたり、山が多いからな。山のほうってだけじゃ見つけにくいよな」

「ぼくも昨日少し調べてみたけど、ちょっと見つけられなかったんだ。今日は検索ワード変えて、探してみるつもりだけど」

「ごめんね、任せっきりで」

「ううん。かまわないよ」

「ところで、今日は智生がいないけどかくれんぼ、するか?」

「そうだねえ。3人でやるのもいいけれど、暑いからこのまま図書館に行かない?そろそろ宿題用の本も選びたい」

「あ、それいい考え。図書館だったらクーラーで涼しいし」

「あ~あ、宿題なんてなくなればいいのにな。読書感想文とかとくに」

「ぼくは自由研究が苦手だな」

「そうか?いちばんりゅう向きだと思うけどな」

「あ、蓮は転校してきたから知らないんだ、あのね」

そう。隆之介は自由研究が得意。

得意すぎて、去年やりすぎちゃったんだ。

『教室にクーラー常備の現在、夏休みは本当に必要か~小学校の今と昔を比べて~』というタイトルで書いて提出したんだもん。

あの時の先生の言葉が忘れられない。

「榊くん……もう少し自由研究にしてくれる?」

 

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