初めての 7

 「外の声は聞こえるけど、中の声は外には漏れない。そしたら、あの姿も外からは見えないの?」隆之介りゅうのすけが聞いた。

【無論じゃ】

「え?でも、ぼくたちには見えてるよ?」

【わしと一緒におるから、ぬしたちには特別に見えておるだけじゃ】

「ふうん」

隆之介はなにか考えているようだった。

しばらくしてニヤッと笑ってぼくたちに言った。

「このあと、古田の横を通り過ぎる時、ちょっと立ち止まる。そこでぼくが“あること”をいうから、みんなは『ほんとかよ』とか『そうかもしれない』とか、適当に返事してくれる?」

隆之介ってば、なにをたくらんでいるんだろう?

 

 水くみ場の方で、男の人が「拓也たくやー!帰るぞー」と言いながら周りを見回している。 

その声が聞こえている拓也がで慌てている。

「とうちゃーん!おれ、ここだよ!」とか言いながら両手を上げて振りまわしている。

拓也の真横に来た時隆之介が立ち止まり、宣言通り話し始めた。

「そういえばさ、ここって霊水がわいている神聖な場所でしょ?そこでいたずらしたりいじわるしたり……とにかく人の嫌がることをすると神様が罰を与えるっていう話があるの、知ってる?」

「ほんとかよ?」れんが言った。

隆之介ってば、打ち合わせしてなくても、そんな話されたらびっくりするよ。

「うん。言い伝えでは天罰が下るとか、神隠しにあうとからしい。悠斗はると、さっきいじわるされてただろ?神様に言いつけたらどう?」

「え?ぼくは……」

「言いつけちゃえよ、悠斗」智生ともきもノリノリだ。

拓也の方を見ると、真っ蒼な顔でぼくたちの方を見ていた。

「ぼくは……いいよ。神様って、なんでもお見通しなんでしょ?じゃあ、次に誰かになにかいじわるしたら、罰を与えてもらえればそれでいいや。今後ずっと……ね」

「ふうん。悠斗らしいな。でも、それもありだね」隆之介が言った。

 

 「そろそろ、バスの時間よ!」おばあちゃんが呼ぶ声が聞こえた。

ぼくたちはそろっておばあちゃんの方にかけだした。

振り返って拓也を見ると、地面にうずくまるように座っていた。

「ねえ、天狗さん。あの空間はずっとあのままなの?」

【それは、ぬし次第じゃ】

「だったら、ぼくたちがバスに乗って出発したら拓也を空間から出してもらえる?」

「そんなに早く出すのかよ?」蓮が言った。

「そうだよ、夜までそのままにして、真っ暗な中ひとりぼっちにさせちゃえよ」智生も言った。

「うん。でもさ、一生懸命探してるお父さんがかわいそうだなって思って。それに閉じ込めっぱなしも、やっぱりかわいそうかなって」

「とか言いながら、しっかりシメてたもんな!」蓮が言った。

……やっぱりバレバレだったかな?今後、いつ天罰がくだるかわからないよってクギさすつもりで言ってた事。

「あら、何かあったの?」

ぼくは、おばあちゃんがトイレに行ってる間にあったことと、そのあと天狗さんが拓也に下したのことを話した。

「そんなことがあったのね。おしおきなんて、天狗さんもいいところあるじゃない?あら、失礼。オトナがする発言じゃなかったわね。でも、できれば早めに解放してあげたがいいわよ。見つからないって警察に通報されたらそれこそになっちゃうから」

おばあちゃん……気にするのはそっちじゃないと思う。

 




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