初めての 3
!!!……水風呂が楽しすぎて、すっかり忘れてた。
「ここも、あなたたちがこの前行った場所と同じで、わき水を汲みに来る人が多いらしいのよ」
おばあちゃんが指さすほうを見ると、何人もの人がペットボトルやポリタンクをたくさん持って並んでいた。
「ここは、水がわいている量が多いんですね」
「飲んでみたいけど、この前みたいにひしゃくとか置いてあるのかな?」
水が流れているらしいパイプには何個も穴が開いていてその一つ一つから水がたくさん流れ出している。
そんな中、一か所誰も並んでいない、空いている場所を見つけた。
「特にひしゃくはないみたいだけど、これだけ水量があるなら手ですくってもいいんじゃないかな?」
ぼくたちは両手でくぼみを作って水をため、飲んでみた。
「おいしい!」
「ここの水も霊水といわれているらしいわね」
たて看板の説明を読んだおばあちゃんが言った。
「だとしたら、ここも天狗さんが“ある”可能性があるわね」
「じゃあ、聞いてみる!おばあちゃん、さっきの袋は?」
ぼくは、お財布と一緒に玉もおばあちゃんに預けていたんだ。
もしも、ポケットから出てしまったら転がって行っちゃうと思ったから。
受け取った袋の中から玉を取り出したぼくは、天狗さんに聞いてみた。
「ねえ、ここには天狗さんの分身っているかな?」
【ふむ……】
天狗さんはしばらくあたりの気配を探っているようだった。
【
「奥……こっちのほうかな?」
ぼくは玉を持って、奥に向かった。
そこには小さな鳥居があって、すこしだけ薄暗くなっていた。
みんなも後ろからついてくる。
「あ、そういえば」隆之介が声を上げた。
「ねえ、このまえの石窟のときは土砂降りにして誰も近寄れないようにして“合体”したんだよね。でも今日のここでは……」そういって周囲を見回した。
たしかに、こんなに人がいっぱいいる中であの光は目立っちゃう。
「ここにある天狗さんの一部、合体しないまま連れて帰るという事はできないの?あの光って、合体したときに出るんでしょ?」
【ふむ……おぬしはここにおる小僧どもの中では一番
「……天狗さんは」おばあちゃんが口を挟んだ。
「雷を呼ぶことは可能ですか?」
雷……?どういうことだろう?
「この時期、夕立の前兆で雷が鳴ることが多いでしょう?降る降らないは別として。だから遠くから
【ふむ……雷のう。しばし待たれよ】
天狗さんがそういった直後、石窟に行ったときと同じように風がぼくたちの間を吹きすぎていった。
続
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