水風呂への道 5

 「じゃあ、おばあちゃんから智生ともきのおかあさんに『自分が行くから』って言ってもらえばいいのかな?」

「それだと時間がかかるから……ちょっと待って」

隆之介はスマホを取り出して、なにか操作をしていた。

自分専用のPCパソコンだけじゃなく、スマホも持ってるんだ。

「かあさんに、『水風呂行きには悠斗はるとのおばあさんが同行してくれるから、保護者の件は任せていいんじゃない?と智生ともきのお母さんにメールして』てメールしたんだ」

隆之介ってば、おかあさんとメールでやりとりしてるんだ……そういえば、すっごく仕事が忙しいらしいって聞いたけど。

「隆之介の言葉だけで信用するのか?」智生が聞いた。

「前にも言っただろ?ぼくのところは『うそは厳禁』。悠斗のおばあちゃんが、昔、自分が習ってた先生だということは知ってるし」

 

 返事が戻ってくるまでの間、ぼくたちは夏休みの宿題について話をしていた。

もちろん文句を言いあってたんだ……こんなにたくさん宿題があると、せっかくの休みに遊べないじゃないかって。

PiPiPiPiPi……電子音がなった。

隆之介がスマホを手に取って確認している。

そしてニンマリ笑って、ぼくたちのほうに画面をむけてきた。

花織かおりも了解したわ。みや先生なら泰生たいきよりもずっと頼りになるって。悠斗君に、おばあちゃんによろしく言ってねと伝えて>

「この、花織って?」蓮が聞いた。

「おれのママ。で、泰生が兄ちゃん」智生が答えた。

……おばあちゃん、先生時代も名前で呼ばせてたんだ。

「これで智生の問題は解決したね」隆之介が言った。

「あとは、いつ行くかなんだけど」

隆之介が机の上から紙を取って見ながら言った。

「なかなか、行ける日が少ないんだよね」

 

 見せてくれた紙は、カレンダーのようになっていた。

四角い枠に区切られた表になっていて、一番上の段に左から右に日~土の文字が書いてあって、その下には数字。

いくつかのマス目は灰色に塗りつぶされている。

「これって、カレンダーか?」蓮が言った。

「うん。この前聞いた“ダメな日”をカレンダー作って記入してみたんだ」

「こうやって見ると……ほんとに少ないな」蓮が言った。

「だからというわけではないけれど、来週の火曜日を『その日』にするのはどうかな?悠斗のおばあちゃんの都合もあると思うけど」

「たぶん大丈夫だと思う。天狗さんに風邪を治してもらってから、前より元気になってるし。この計画にも乗り気だったから、もしかして先約あっても断っちゃうかも」

「じゃあ、一応来週火曜日で決定するよ。時刻表を印刷して、乗る予定のバスに印をつけておいたから、家の人にわたしてくれるかな」

すごい……用意周到ってこういうことなんだろうな。

「帰りのバスの時間から逆算して。集合は1時半、場所は市役所の駐車場だよ」

 

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