水風呂への道 3

 「それは、そうなんだけど……」

「たしかに私は悠斗はるとの保護者のひとりではあるけれど、まずは真智まちに言うのが正しいんじゃないのかな?」

「うん……そう。それはわかってるんだけど」

「真智だって、ちゃんと話せば許可してくれると思うわよ。友だちに聞いた面白そうな場所に行ってみたくなった。だから友だちと協力して行き方を調べて行ってくるってね。そうね、行くまでのいきさつと行った先のことを、帰ってから記録してごらんなさい?立派に自由研究にもなりそうよ?少なくとも絵日記のネタにはなるでしょう」

「あ、そうか。おばあちゃん、アタマいい!」

「そりゃ、小学生だったころもあるんだから……それから」

「なあに?」

「もしも、悠斗でもお友達でも」

「?」

「子どもだけでは危ないという理由で反対されてるなら、ということにしなさい。そのときはちゃんとついて行ってあげる」

 

 家に帰ったぼくは、夕ごはんを作っているママのところに行って手伝いをしながら話をきりだした。

「あのね、ママ。こんど隆之介りゅうのすけたちといっしょに行きたいところがあるんだけど、行ってもいい?」

「あら、いつもは遊びに行くとしか言わないのに珍しいわね。どこに行きたいの?」

智生ともきが教えてくれた場所なんだけどね、夏だけ入れる水風呂があるんだって」

「ああ、聞いたことはあるわね。ママも行ったことはないけれど。でも、遠いわよ?自転車でなんか行かせられないわ」

「うん。遠いのは知ってる……10キロくらいあるんだって。智生からその話を聞いてね、みんなも行きたがったの。そうしたら隆之介がHPホームページとか調べてくれたの。それでね、市営バスで行こうよって」

「あら。あそこってバスが通ってたんだ。知らなかったわ。でも、悠斗はバスの乗り方知らないでしょう?」

「それも隆之介が調べてくれた。いくら必要なのかも全部。バスはれん以外は乗ったことがないって言ってたから、こういう時に経験してみるのもいいんじゃないかな?って」

 

 「……おばあちゃんね?最後のひとこと」

図星。

昨日、どうしてもだめなら保護者としてつきそうことを約束してくれたあとにアドバイスをくれたんだ、こう言ったら効果的よって。

でも、ママにはバレバレだった。

ママはふうっとためいきをひとつついて言った。

「まあ、いいわ。気をつけて行ってくるのよ」

「行っていいの?」

「反対したところで、もうおばあちゃんが味方についているんでしょ?子どもだけでは危ないなんて言ったら『私が保護者として引率する』って一緒に行くだろうし。だから行ってきていいわよ。あなたたちだけでも、おばあちゃんつきでも」

 

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